『ロックマン』好きなら絶対刺さる傑作2Dアクション『グラビティ サーキット』をオススメしたい!栄養たっぷりの名作オマージュに加え、独自の“ステゴロ”バトルも素晴らしい
横スクロールの2Dアクションゲームはお好きですか? 探索型ではない、ステージクリア型の王道アクションゲームを欲していませんか!? 『グラビティ サーキット』画像・動画ギャラリー そんなあなたにモーレツにおススメしたい新作がある! その作品の名は『グラビティ サーキット』だ! この作品は2016年頃にSteamに商品ページが開設され、それ以来、長きにわたって「開発中」となっていた。実に7年以上の年月を経て、2023年7月に満を持して発売を迎えたのである。当時からウィッシュリストに登録していた筆者は即座に購入したのだが、これが2Dアクションゲーム好きの魂を揺さぶりかねないほどの面白さを持った傑作だった。 どれだけ面白かったのかと言えば、最終的に実績をコンプリートするまで遊びこんでしまったほどである。 その面白さを証明するかのごとく、Steamのレビューでは「圧倒的に好評」の高評価を7月の発売以来、長きに渡って維持している。 さらに9月21日から9月24日にかけて、千葉・幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2023」ではNintendo Switch版が出展。 実は筆者もクリアファイルをもらう目的で(さりげなく)遊んでいた。 それでありながらレポートを執筆しなかったのは、すでに本稿を仕上げていたためである。 11月30日をもってついにコンソール版が発売された今! 最高の状態になって日本上陸を果たしたこの時! 改めて、この珠玉の傑作アクションゲームを紹介したい。 ということで、先んじて言わせていただく! これを読んでいる2Dアクションゲーム好きたちよ。直ちに買えッ!!! 文/シェループ ■あの”蒼きヒーロー”の名作に多大な影響を受けた2Dアクションゲーム いきなり結論付けてしまったが、ゲームの紹介に入ろう。 『グラビティ サーキット』は横スクロール形式のステージクリア型アクションゲームである。PC版にくわえ、11月30日からPS5、Nintendo Switchのコンソール版の販売も開始。ダウンロード版のみならず、パッケージ版も用意されている。 プレイヤーは主人公「グラビティ・サーキット」こと「カイ」を操り、無慈悲なロボットたち「ウィルス軍」と、彼らを裏で指揮する「ガーディアン部隊」との戦いを繰り広げていく。 本作の舞台となるのは、ロボットたちが社会生活を営む惑星。 数十年前、彼らは発掘調査が行われていた土地で「アーク」と称される謎の構造物を発見した。そして、それとタイミングを合わせるかのように「ウィルス軍」が出現。ロボットたちの街を始め、世界各地を襲撃し始めた。 武器を持たず、数でも劣るロボットたちは、「サーキット」と呼ばれる不思議な力で戦う9体の守護者「ガーディアン部隊」にすべてを託すも、戦いは次第に大規模な戦争へと発展。最終的にウィルス軍は撃退されるも、ガーディアン部隊はカイを除く8体が力尽きる形で終戦を迎えた。 そして平和が戻ったかに見えた数十年後の現在、倒したはずのウィルス軍が再び現れ、またもや世界各地を襲い始めた。同じころ、戦争当時のダメージにより、長き眠りについていたカイも目覚め、ウィルス軍に襲撃されている街へと向かう。 そこで目にしたのはガーディアン部隊の仲間「パワー・サーキット」こと「ケーブル」。ウィルス軍は彼らの指示によって動いていたのである。 なぜ、かつての仲間たちであるガーディアン部隊がこのような暴挙に出たのか? カイは彼らの反乱を阻止し、その真相を突き止めるべく、戦いに身を投じていく……というのがストーリーのあらましである。 ほんの少しだが、ゲーム開始と共に始まるオープニングステージのイベントも含めた。 システム周りは8つあるステージを自由に選んで攻略するステージセレクト、最深部で待つボスを倒すことを目的とした各ステージのクリア条件、ボスを倒すと同時に得られる必殺技こと「バーストスキル」といった要素を特色としている。 2Dアクションゲームに詳しい人なら、これらには「んん?!」となったと思われる。 もう、隠さずに言おう。本作『グラビティ サーキット』は、カプコンの看板アクションゲーム『ロックマン』シリーズに強い影響を受けた、いわゆるフォロワー作品なのである。 厳密には派生の『ロックマンX』および『ロックマンゼロ』が近い。 壁を蹴りながら駆け上がるアクション、カイの基礎ステータスを向上させるパワーアップアイテムを見つけ出す探索要素、拠点マップを介して各ステージへと移動する仕組みがその象徴だ。 ステージ内で助けを求めるロボットを救助する要素もある。 元ネタが分かる人は「げえっ!」と声が出たかもしれないが、安心していただきたい。彼らが敵の攻撃(流れ弾など)を受け、永久に消え去ってしまうようなことはない!絶対にない!(力説)なので、安心して助けちゃってください! カイが高速で移動する「ダッシュ」のアクションもある。ただ、本作の場合は対応するボタンを押しっぱなしで走る状態になる(離せば解除される)ことから、仕組み的にはやや異なるものになっている。 他にカイのアクションを拡張させたり、特定のステータスを上昇させるなどのパッシブボーナスを付与する「ブースターチップ」なるものもある。これは拠点マップにいる救護ロボット「ナース」から購入する形となっている。 ただ、購入に当たっては前述のロボットを助けた際に手に入る「救助トークン」なる専用通貨が必須。そしてその数も16種類と非常に多いのに加え、装備できるのは3つまで(切り替えはステージ攻略中ならいつでも可能)との制約も課せられている。 こんな具合にゲーム全体の作りは、フォロワー作品らしい”そのまんま”ぶりである。 ところがどっこい!明確に”違う”、本作ならではの特徴があるのだ! ■打撃メインで立ち回る、格闘ゲーム風の戦闘スタイル それこそが戦闘スタイル。 本作はパンチ、キックといった打撃とフックショットの2つを軸に戦うのである。 つまるところ、接近戦がメインの俗に言う“ステゴロ”スタイル。遠距離攻撃はサブ扱いなのだ。 そもそも、本作において遠距離武器と明言できるものはフックショットだけ。それも連射が効かず、主要な攻撃手段として適していない。ゆえに敵を素早く撃退したくば、その懐へと飛び込んでパンチやキックを叩き込む!まるで格闘ゲームのような立ち回りが必要とされる作りになっているのである。 そして、もうひとつ重要な攻撃技で「投げ」がある。 本作は敵にトドメを刺すとそのまま爆発四散せず、少しの間、灰色の状態になってその場に残り続ける。この時にフックショットを命中させると、カイが敵を持ち抱える。 そのままフックショットを射出するボタンを押し続けると持ち続け、離すと同時に敵を投げ飛ばすのだ。この投げ飛ばした敵が他の敵に当たると、なんと一撃必殺! どんなに耐久力が高かろうが、当たった対象を一撃で倒してしまうのだ(大型系の雑魚敵は除く)。もちろん、当たった敵もすぐに爆発四散せず、その場に残り続ける。なので、再びフックショットを射出すれば、再び持ち抱えて、投てき用の武器として使える。 こうした倒した敵も武器として使えるというユニークな要素が盛り込まれている。また、その特徴通り、投げはフックショットに並ぶ事実上の遠距離武器(技)でもある。しかも、雑魚敵ならごく一部を除いて一撃で倒してしまうという、おそるべき威力を持っている。 しかし、それには倒した敵が必須となる都合上、連発はできない。そのため、結局は打撃で戦うことも必要という形でバランスを取っている。それに一撃必殺になるのはあくまでも雑魚敵だけ。ボスにはそのような効果はまったく発揮されない。そもそも、ボス戦では投げ技を使える機会が限られている。基本、メイン攻撃として用いるのは打撃なのだ。 このように本作は徹底して接近戦を強調したゲームデザインになっている。ただ、遠距離側にも「投げ」のような一撃必殺技があって、使い方次第で難易度を急低下させられる突破口を用意。そんな非常に個性的かつ、極端な一面を持ち合わせたバランスにまとめられているのである。この辺りは明確に本作独自の遊びとして確立されていて、作品全体の大きな特徴のひとつになっている。 ■答えは己で作れ!似ているようで異なる戦略性を持った「バーストスキル」 もうひとつ、独自性を象徴するもので「バーストスキル」がある。前述にてボスを倒すと解禁されると説明した通り、これは『ロックマン』で言うところの特殊武器に当たる。 「独自性も何もないじゃないか!」と物申したくなるかもしれないが、重要なことなので繰り返そう。倒しても“解禁される”だけ。倒すと“入手できる”とは言っていない。別の言い方をすれば“入手できない”。 入手するには拠点マップで、カイを後方支援してくれる旅人のロボット「ネガ」から購入しなくてはならないのだ。しかも、これすなわち、逆を言えばスキルの入手は任意。ひとつも買わずにゲームを進めることもできる。 「バーストスキル」自体もボス1体を倒すにつき2種類が解禁されるため、その総数は非常に多い。 そして、大事なこととして「バーストスキル」があってもボス戦が極端に簡単になったりはしない。そもそも、ボスたちこと「ガーディアン部隊」の8体に弱点は設定されていない。彼らを楽々と倒す“答え”は存在しないのである。 ただし、すべてのボスに対してノックバック効果を発揮したり、使い方次第で連続ダメージを与えられるスキルはある。そのようなスキルは「どこで使うと一番効果的なのか」と使っては試し、自分ならではの戦闘スタイルを編み出すというのが、この「バーストスキル」にまつわる特徴となっている。まさに「答えは自分で作れ!」。戦闘スタイル同様、格闘ゲームを思わせるコンセプトで設計されているのだ。 こちらは元ネタが存在することから、独自性は多少薄れる。だが、細かい仕様や活用法はまったく違っており、似ているようで違う面白さを演出する要素に仕上げられている。 ほかにも「バーストスキル」発動時に消費する「エネルギー」は全種類共用、スキルの発動は装備したスロットに応じて簡単なコマンド入力が必要になるといった点でも独自性を出している。特にエネルギーは最大値が少なく、前述のパワーアップアイテムで強化しても6目盛りまでのため、非常に枯渇しやすい。回復自体は専用の消費アイテムのドロップ率が高いことから容易だが、それでもずっと頼り切るのは難しい。こうした制限を課しているのも、独自性を物語る部分のひとつだ。 確かにゲームデザインの軸はフォロワー作品としての範疇に留まっている。だが、根幹たるアクション部分は本作ならではのもので、似ているようでまったく違う手応えを強く押し出したものに仕上げられている。 とりわけ戦闘スタイルは最たるもので、実際に触ってみれば、その違いと”格闘ゲーム”っぽさを感じられるだろう。 ■プレイヤー自身の上達が”圧倒的なスピード感”となって現れる秀逸なゲームバランス 本作最大のセールスポイントは、『ロックマン』のフォロワー作品としての“らしさ”と新作アクションゲームとしての独自性を絶妙なバランスで両立させていること。システム周りはソックリなのに、アクションゲームとしての手触りは全く違い、それでいて元の“らしさ”もある。そんな高度なまとまりを見せているのだ。 別物であることを最も象徴しているのは「投げ」と「バーストスキル」を使いこなす面白さと、それと共に生まれる圧倒的なスピード感だ。 特に打撃(パンチ、キック)なら3~4発ほど叩き込む必要のある敵を一撃で倒す「投げ」は、使いこなすだけでステージの進行速度に決定的な違いが出る。そこに「バーストスキル」による攻撃を適時加えれば、文字通りのノンストップアクションが実現。圧倒的な力と、忍者のごとき勢いでステージを駆け抜ける気持ちよさを味わえるのである。 とはいえ、初見で実現可能なほど簡単ではない。できるようになるにはステージの構造、敵の配置を把握することが必要。だが、どちらにもランダム性はなく、決まったパターンに沿って設計されているため、やればやるほどに経験と記憶が指と頭に蓄積されてくる。それと共に動きも洗練されていき、最終的には前述のようなアクションを難なくこなせるようになっていく。プレイヤー自身の上達がきちんと現れ、それが圧倒的なスピード感という絵的にも仰々しい形で返ってくるようになっているのだ。 プレイヤーの上達がちゃんと結果として返ってきて、見た目でも変化が現れるというのはよいアクションゲームの証でもある。 本作もその醍醐味を見事に押さえると同時に、「投げ」と「バーストスキル」という独自要素を活用して表現。このまとめ方が絶妙で、フォロワー作品らしい“らしさ”と、まったく別のアクションゲームとしての手ごたえを確立させているのである。 ■あらゆる技と特殊効果のフル活用から、それらに頼らないスタイルにも完全対応! 「バーストスキル」は「ブースターチップ」と並行して、自分だけのカイを作り出すカスタマイズの楽しさも演出。どちらも数が豊富で、性能面でも大胆かつ破天荒なもの揃いなのである。 「バーストスキル」なら発動中無敵の空中ダッシュにバリア、足場生成から一時的な機動力アップなど。「ブースターチップ」なら二段ジャンプ、フックショット吸着効果付与、ダメージ変換(体力の消耗をエネルギーの消耗に変更させる)といったものが象徴的な一例だ。それもあって、入手すればするほど、ステージ攻略の幅が広がると同時に、難易度の劇的な変化まで生じる。組み合わせ次第で、自分なりの遊びやすさと攻略法を追求できるのだ。 どちらも装備数に限界があるため、常時万能なカイは決して作れず、動かし続けることも難しいのもカスタマイズの面白さを引き立てている。加えて、スキル発動に用いるエネルギーも、いくらパワーアップアイテムを回収して最大値を増やしたところで、枯渇しやすさは変わらない。こうした制約を踏まえ、どうやって状況に適した組み合わせを作るか? あるいは、カスタマイズは最低限にし、己の腕を頼りにする方針で攻めるか? こうしたさまざまな戦術が組み立てられるのもあり、プレイヤーそれぞれの好みが顕著に現れる。そしてどのステージもボスとの戦いも、初見では掘り尽くせないほどの深みがあるのだ。 なにより素晴らしいのが、『ロックマン』の醍醐味たる「答え探し」の遊びを本作ならではの形で作り上げていること。制限下でベストなカスタマイズをして困難を乗り越えやすくしたり、自分なりのボスにダメージを与えやすいスキルを厳選するといった、本作の戦闘スタイルおよびシステムならではのものに仕上がっている。装備の組み合わせにプレイヤーの好みが顕著に現れるのもそのひとつである。 特にボスに大ダメージを与えるスキルが存在するという、安易な模倣に走らなかったことを高く評価すると同時に、大きな拍手を送りたい。仮に存在していたら、本作の魅力は格段に落ちていた。そんなのがあれば、「本家本元で十分でしょ」となる。そもそも「それってこのゲームでしか得られない栄養?」と言われたら、違うと言わざるを得ないだろう。 そうした安易な方向へと走ることなく、独自の道を選んで貫き通したのが素晴らしい。しかし実は発売後、Steamコミュニティに掲載された開発チームのQ&Aによると、制作初期には存在したという。だが、最終的に出来上がった「バーストスキル」が格闘ゲームの必殺技に近いものになったため、不採用になったようだ。結果的にそれが本作独自の遊びと”栄養”を生み出していることを見れば、大変よい判断だったと言えるだろう。 チップもスキルも個別に購入する必要があり、全種類が揃う頃にはゲームが終盤に突入しているという、宝の持ち腐れ感もある。だが、そこも本作はクリア特典として、強化要素をすべて引き継ぐ「ニューゲーム+」を用意し、様々な答えを追求する余地を設けている。 あえて何も購入せず、己の拳と腕前だけを頼りにする“俺より強い奴に会いに行く”スタイルで全ステージ攻略に挑むもよし。それによる攻略も想定してか、全ステージにスキル、チップの使用を強制する場面がいっさい無いことも特筆に値する。 このどんな遊び方にも広く耐えうる作りには、本家本元たる『ロックマン』が好きな人ならその崇高な精神性に感銘を受け、アクションゲーム好きなら圧倒的なやり甲斐と極め尽くす楽しさに魅了されるだろう。 そうした部分からも本作はフォロワー作品としても、ひとつの新作アクションゲームとしてもハイレベルなまとまりを見せている。ただのフォロワー作品として完結していない面白さと体験が凝縮されているのだ。 ■素晴らしい打撃音が生み出す抜群の手触り。爆裂マニア垂涎のド派手な演出にも注目! もうひとつ、本作を語るに当たって外せないもので、手触りのよさがある。 パンチにキック、投げ技とフックショットまで、どれも敵に命中させれば、それはもう痛快極まりない効果音が鳴り響く。思わずコントローラのボタンをギュッと力強く押し込んでしまうほどだ。それらの攻撃を叩き込まれた敵も、やられる際には大変見事な爆発四散を見せてくれる。もちろん、それと共に鳴り響く爆発音もパーフェクトな仰々しさと重々しさだ。 よいアクションゲームというものは、手触りの良さも欠かせない。それが最終的には動かすだけでも楽しい魅力へと繋がってくる。本作はそうした基本中の基本もバッチリ。これぞアクションゲームと言わんばかりの素晴らしい手応えが得られる。 そうは言っても、肝心のボスのやられ様はどうなのよ……と思うかもしれないが、ご安心あれ! 厳しい戦いを見事乗り越えたプレイヤーを讃えるかのような素晴らしい大爆発を見せてくれる。その派手さには、爆裂マニアもウットリ間違いなしだ。 ボスに関しては、その戦闘内容も一進一退の攻防に終始する、火傷確実の熱すぎる仕上がりとなっている。そもそも、接近戦主体だけあって、ものすごく激しい!ボス自身の動きも多彩で、ダメージが一定量まで減ると専用の「バーストスキル」を解禁して攻めてくるようになるため、まさに息つく暇がない。「アクションゲームと言えば、手に汗握るボス戦!」と豪語するプレイヤーも大満足の手応えが得られるはずだ。 ちなみに本作は「イージー」「ノーマル」「ハード」の難易度が選べ、「ハード」であればより過激で、一瞬の油断も許さぬスピードで攻めてくるボスとの戦いが楽しめる。もし、アクションゲームの腕前に自信のあるなら、ぜひ初見プレイ時には「ハード」を選んでいただきたい!きっと手にしたコントローラがグショグショになってしまう、驚愕にして心が震えあがる戦闘を堪能できるだろう。 なお、本作はどの難易度でも共通してエンディングを迎えられる。ストーリーが変化したり、特定の難易度にしか登場しないボスと戦えるといった限定的な要素はいっさい無いのでご安心いただきたい。イベント分岐とエンディングの変化もないので、素直に遊び通せるぞ。 ■16ビット機のゲームらしさへのこだわりが光る音楽と魅力的な設定が秘められたストーリー さらなるセールスポイントとして挙げられるのが音楽だ。 全体的にスーパーファミコンに象徴される、16ビット機のゲームらしいアレンジを施した楽曲中心で構成されている。 それでいて、曲それぞれの完成度も高く、道中や戦闘と言った様々なシチュエーションをこれでもかと言わんばかりに盛り上げる。筆者イチオシにして要チェックなのは「パワー・サーキット」ステージ、最終ステージ1のボス戦、そして最終ステージ2の3曲だ。 そんな本作の音楽を手がけたのは『ライバル・メガガン』、『Blazing Chrome』、『マイティ・グース』などのインディーゲームでも同ポジションを担当されているDominic Ninmark(ドミニク・ニンマーク)氏。元々、16ビット機を意識した曲制作を持ち味としているコンポーザーであり、代表作として挙げた3作でも”それらしい”楽曲を作り上げている。 本作の楽曲もそれらの流れを汲んだものとなっている。ただ、今までの氏が関わった作品と異なるのは、音楽だけに限らず、原作(ストーリー、世界観)とキャラクターデザインも担当していること。そのためか、本作はメロディラインの主張が強めであると同時に、それぞれのステージで待ち受けるボスのイメージを意識した楽曲に仕上げられているのだ。 それもあってか、プレイするとボスと楽曲が連動して印象に残りやすい。同時にプレイヤーそれぞれ、曲とセットで“推し”のボスも出てくるという、ちょっとした魅力が備わっているのだ。それを狙ってか、ボスたちも攻撃パターンや台詞などで独自の個性を描いている。 どんな“推し”が出てくるか、あるいは楽曲が耳に残ってしまうかはプレイしてからのお楽しみだ。おそらく、大半のプレイヤーは「ウェーブ・サーキット」こと「メドレー」が最も印象に残るかもしれない。 また、ストーリーの中身も終盤以降に驚きの展開があるなど、なかなか見逃せない仕上がりだ。そして、気になる方が少なからずいるかもしれないので紹介しておくと、ちゃんと完結する。それでいて、続編を作れそうな魅力的な設定もあるので必見だ。 なお、テキストは日本語にも対応。翻訳も良好で機械的な感じはほとんどないので、素直に一連の展開を楽しめるはずだ。 ■実は日本語版は様々な不具合と課題が解消された最新にして最高のバージョン! 見所の多い本作だが、気になる点も少なからずある。 とりわけ目につくのは、ステージ構成がやや窮屈ということ。 これはフォロワー作品なりに元に沿った形と思われるが、反動で本作独自の打撃で暴れまわる立ち回り、忍者のごとくステージを駆け抜ける爽快感が殺がれやすい。穴やスパイク(トゲ)のトラップも多く、カイ自身の当たり判定もやや大きめに取られていることから、意図しない接触に至ってしまうことがあるのも気になるところではある。 せめてもの救いは本作、穴にせよスパイクにせよ、落下したり接触しても大ダメージ扱いになること。即ミスとはならないので、ある程度の安心感を持ってステージ攻略に臨められる。残機制もないため、何度でもコンティニュー可能なのも嬉しいところだ。 さらに一部のステージでは、フックショットを斜め上方に射出して天井に突き刺し、その反動を利用して宙を舞うワイヤーアクション(スウィングアクション)が要求されてくる。 これもフックショットの射出方向がデフォルトだと直線固定で、斜め方向に出すにはコントロールスティック(方向キー)の入力も必要になることから、操作ミスによる事故が頻発しやすい。その負担と事故率を軽減させるためにも、斜めへの射出を固定させる操作が欲しかった限りだ。 他にも1ステージ当たりのボリュームが大きく、ノーミスクリア系の実績達成が煩わしいといった粗が見受けられる。デザインこそ新規に描き起こされているとはいえ、一部オマージュ元”そのまんま”な雑魚敵が出てくるのも人によっては気になるかもしれない。 また、本作の家庭用ゲーム機版は海外では先行してPC版と同じ7月14日に発売された。 筆者はPC版を先に遊んだ後、我慢できなくなってNintendo Switch版を買ったのだが、正直申すと、当時は購入を控えた方がいいと忠告したくなるほど厳しい出来だった。随所で処理落ちと操作遅延が生じるほか、ボス戦の最中にブルースクリーンが発生してゲームが遊べなくなるという、致命的な不具合が存在したのだ。 しかしながら、この不具合は8月に実施されたアップデートで解消された。さらに10月4日には大型アップデートも実施。当初、PC版でも会話単位によるスキップしかできない問題を抱えていたイベントを丸ごと無くす「スピードランモード」、スキルとチップのセットの組み合わせを保存する機能などが追加され、より一層遊びやすくなった。 つまりどういうことかというと、今回発売される日本語版は発売当初に存在した課題の多くを解消した最新にして最高のバージョンであるということである! 本作のことを7月のPC版発売当時より知るプレイヤーの中には、家庭用ゲーム機版が海外先行になったことに不満を抱いた人も少なからずいたかもしれないが、嬉しいお知らせだ。日本語版は不具合の多くが潰され、さらに新機能が追加されたものになる! なので、当時から発売を楽しみにしているなら迷わず突撃を!ここまで紹介した魅力を存分に味わえることを保証する。 ただし、前述したフックショットの操作にまつわる課題はアップデート後も残されたままである。さらにNintendo Switch版に関してはロード時間が長い(10~15秒ほど)という独自の難点がある。これは海外版の発売当初から存在していて、大型アップデート後も解消されていない。しかしながら、発生するのはステージ開始前に限られており、ゲーム本編(プレイ中)にはそのような時間が生じたりはしないのでご安心を。 ■最高のライバルにして、”進化の可能性”を追い求めて欲しいヒーローが誕生した 最後の最後で難点も紹介してしまったが、本作が完成度の高い作品であることにはなんら揺るぎはない。繰り返しになるが、2Dアクションゲームが好きならば、ぜひともプレイいただきたい傑作である。同時に『ロックマン』を意識したフォロワー作品としても、元ネタのらしさがありながら、戦闘スタイルによって独自の味と栄養を確立した大変見事なものに完成されている。 一通り遊び終えて、筆者がしみじみ感じているのは、本作および主人公の「グラビティ・サーキット」は、『ロックマン』最高のライバルにして、お互いに”進化の可能性”を追い求める未来が到来して欲しいと心から応援したくなるヒーローであるということだ。 話は変わるが、筆者個人のお気に入りインディーゲームのひとつで、『フリーダムプラネット』というアクションゲームがある。 この『フリーダムプラネット』は当初、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(以下、ソニック)のファンゲームとして制作が始まり、最終的にオリジナルの作品として世に出ることになったという経緯がある。そのためか、作中には随所に『ソニック』まんまなネタが散見されるのだが、3人それぞれ違った性能を持つプレイヤーキャラクターを始め、アクションゲームとしては独自の個性を確立しており、ここでしか得られない栄養を持った内容に完成されていた。 そうしたこともあって『フリーダムプラネット』は好評を博し(奇しくもSteamの評価は『グラビティ サーキット』と同じく、「圧倒的に好評」を獲得している)、後に続編『フリーダムプラネット2』が発売。 前作の魅力はそのままに、よりオリジナルのアクションゲームとしての魅力を高めるに至った。 同時に『ソニック』のライバルに近しい存在感を持つに至っている。 『グラビティ サーキット』もそんな『フリーダムプラネット』と近い精神を感じられ、「1作で終わらずに続いて欲しい!」「より多くの2Dアクションゲーム好きに遊ばれて欲しい!」との思いに駆られるのだ。 前述の通り、本作のストーリーは単体で完結しているのだが、続編が作れそうな余地は残されている。これがさらなるシリーズ化を意図しているのかは、ドミニク氏を始めとする開発チームのみぞ知るところである。 だが、もしも続編の発売と同時にシリーズ化が決まったのなら応援したいし、『ロックマン』とは方向性の異なる“答えのあるアクションゲーム”を突き詰めていってもらいたい。 『ロックマン』シリーズのいちファンとしても、このようなとても素敵なライバルが現れたことを大変うれしく思う。ひとつの2Dアクションゲームとしても、戦闘スタイルと90年代の良さを突き詰めた仕上がりが実に見事だ。 繰り返すが、2Dアクションゲームはお好きですか? ステージクリア型の王道アクションゲームを欲していないか!? ならば、この『グラビティ サーキット』に挑むのだ!そして、“答えのあるアクションゲーム”を求める第二のヒーローにして、最高のライバル誕生の瞬間を見逃すな!
電ファミニコゲーマー:シェループ
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