災害時の避難所が抱える「臭い問題」を解決へ。京都の大学生と企業が生み出したソリューションとは
地震や大雨などの自然災害の多発に伴い、避難所生活への備えと支援に関する関心は高まるばかりです。 そこで京都工芸繊維大学 櫛研究室が実施したのが、UCI Lab.、パナソニックと連携し、避難所の衛生環境改善や避難生活の質向上を目指す「避難所の衛生ストレス解決プロジェクト」。 今回は、メディア向けに同研究室と2社が実施したセミナーの様子を紹介します。
◆「共創デザイン」で衛生ストレスの解決を目指す
被災地では、住民の生命や安全の確保、ライフラインや交通機関の復旧などさまざまな課題があります。その中で最優先ではないものの、気になるのが「衛生ストレス」。 入浴や洗顔、歯みがきなどの日頃の衛生習慣ができなくなり、汚れや臭いが気になるといったストレスのことです。今回のプロジェクトは、このストレスの解決を目指したものでした。 プロジェクトの発起人となったUCI Lab.合同会社 所長の渡辺隆史氏は、プロジェクトの目的について以下のように語りました。 「ニュースなどでも話題になることはあまりないのですが、地震や豪雨などの自然災害にみまわれた被災地では『匂い』が避難生活で感じるストレスの一つの大きな要因になっていることがプロジェクトの中で分かりました。 このプロジェクトは、避難生活における衛生ストレスを、パナソニックの『ナノイーX』による新しい用途開発をデザインすることで、実際に現場で解決することを目指す共創デザインプロジェクトです」(渡辺氏) プロジェクトの対象となるのは、住民の生命や安全を確保する災害発生直後の「緊急対策期」を経て、避難所対策が中心になる「応急対策期」。 「1週間、1カ月と避難生活が長期化していくと、さまざまな問題が発生してきます。その先には仮設住宅などに移って復旧・復興などを行っていくのですが、その前の『応急対策期』における衛生問題を解決できるようなものを作ろうと定めて展開していきました」(渡辺氏) セミナーには、京都工芸繊維大学 デザイン・建築学系の櫛勝彦教授も登壇。今回のプロジェクトで実施した「共創デザイン」について次のように語りました。 「社会が成熟して『シェア』という意識が浸透していく中で、企業や行政からサービスや製品が開発されて生活者に提供され、それが消費される。 そういう一方的なものではなく、生活者または企業、いろいろな団体が能動的なプレイヤーとして存在し、その相互的な関係の中で創造することが『共創デザイン』という在り方かなと思っています」(櫛教授) 今回、この「共創デザイン」を行ったのは京都工芸繊維大学 デザイン・建築学系の学生たちです。 「我々デザイナーは課題に対する専門家ではないため、問題状況とその解決に向けた活用にどのような資源があるかについてプレーンな気持ちで探索していく『エクスプローラー』としての役割がまずあります。 さらに、探索して集めた情報を分析して編集する『エディター』としての役割があり、そこで定義付けられた問題を解決し、新たな価値を提供する『アーティキュレーター(表現者)』というのがデザイナーの今の役割なのではないかと思います」(櫛教授)