戦力外の男たちを救うトライアウトは存続すべきか…参加した元楽天の清宮虎多朗が日ハムと育成契約で21年連続で合格者が出るも
「私はヤクルトの編成時代には必ずトライアウトを視察していた。ほとんどの選手はシーズン中にチームの編成担当が見ていてデータも集めているのでトライアウトで評価が変わることはほぼなかった。あえて言えば、怪我をするなどシーズン中にあまり見ることができなかった選手のチェックくらい。NPBの復帰という点では、トライアウトの役割は終わったと言える。ただ独立リーグや、社会人、今季からはオイシックス、くふうハヤテなどもできて、そういったチームはトライアウトを実質的なスカウトの場として活用している。戦力外の選手がなんらかの形で野球を続けるための場所としては必要なのかもしれない。では、その責任をNPBや球団が負うのか、選手会が負うのか。ただチーム側から見れば、そこまでNPBがドラフトで獲得した選手の先をケアするのであれば、アマチュアへのスカウト活動に好影響は与えると思う。いずれにしろ形は変わっていかねばならないでしょう」 その一方で「トライアウト廃止論」を唱える意見もある。 社会人クラブチームの西多摩倶楽部を経て、育成ドラフト7位で巨人に入団したものの故障などもあり1年で“戦力外”となり、その後、選手のセカンドキャリアをサポートする仕事に就いていた川口寛人氏も「トライアウト廃止」派だ。39歳になる川口氏は、介護業界の大手「SOMPOケア」に転職し、現在、ラヴィーレ若葉台のホーム長としてマネージメントする業務にあたっている。 「1年でも長く野球を続けたいという選手の気持ちは理解できますが、トライアウトは、もう本来の目的とは違う形に進んでいますよね。現役ドラフトのように各球団が必ず一人を獲得するなどの約束事がない限り、トライアウトの存在意義はなくなっていると思います。野球ができなくなった後の方が大事で、私はできるだけ早くセカンドキャリアの道へシフトすべきだという考えなんです。企業などとの再就職のマッチングの窓口をNPB、選手会が作っていますが機能していません。そこへのアプローチの仕方をもっと真剣に考えるべきではないですか。今は起業する元選手が増えているようですが、企業に再就職して、仕事にやりがいを持ちながら、保証、安定、安心を手にすることが大事だと思います。私は、社会人野球の富士重工で活躍された福田崇彦社長に声をかけていただき、今は、介護施設の管理の職務に就き、50、60人の社員やスタッフをまとめていますが、とてもやりがいのある仕事ができています。ひとつのセカンドキャリアのモデルケースになればと頑張っていますが、企業から見れば、厳しい世界を勝ち抜いてきてプロになった人たちへのニーズはあります」 これもトライアウトの存続と同時に推し進めねばならない重要な問題提起だろう。今後、NPBと選手会がトライアウトの存続問題にどう決着をつけるか注目だ。(文責・RONSPO編集部)