難民問題、対IS……パリ同時テロが1週間でもたらした変化
米国とロシアが対IS攻撃で歩調合わせる?
パリ同時多発テロは、発生からわずか1週間でヨーロッパにおける難民受け入れに関する世論を大きく変える引き金となった。また、過激派組織「イスラム国」(IS)壊滅のためにフランス軍はシリア国内のISの拠点とされる地域への空爆を開始。空爆目標に関する詳細な情報をフランス側に提供したのはアメリカとされており、ロシアのプーチン大統領も17日に地中海に展開するロシア海軍に対して対IS攻撃でフランス海軍と協力するよう命じた。アメリカとロシアが対ISでは歩調を合わせる見通しが高まり、この1週間で国際社会の流れが文字通り急変した。 ISという「共通の敵」を壊滅するために、ロシアがアメリカや西欧諸国と連携を取る可能性が浮上している。しかし、国際社会の注目がシリアに集まることによって、ウクライナ問題で欧米が譲歩するのではないかという懸念も発生しており、ISIL壊滅に向けて一時的にでもロシアと共闘したいフランス などが対ロシア経済制裁の内容見直しを近く提案するのではないかという指摘もある。 一見すると、対ISで、アメリカとロシアとフランスの距離が縮まり始めたように見えなくもない。これまでの利害関係を考えた場合、1週間でこれらの国々の関係がガラリと変わるとは考えにくいものの、この流れに敏感に反応したのが、ポーランドとバルト3国だ。複数のメディアが先週からロシアがウクライナの国境周辺で兵力の増強を行っていると報道。エストニアのロイバス首相は17日、議会で「(ウクライナにおける)停戦協定の順守ではいかなる妥協もあってはならない。別の地域における協力関係が、ルール変更を容認する物であってはならない」と語り、ロシアの動向をけん制している。 (ジャーナリスト・仲野博文)