舞台「呪術廻戦0」主演の小越勇輝、27年の俳優人生を振り返り「殺気立っているような空気感を自然とまとっていたのかな」
子役としてドラマデビューし、人気漫画原作の舞台でもさまざまなキャラクターを演じてきた小越勇輝。これから舞台「呪術廻戦0」WITH LIVE BANDの上演を控えている。30歳の節目を迎え、俳優生活も27年のベテランとなってきた彼に、役者としてのターニングポイントや自身の成長、今後の目標などを聞かせてもらった。 【写真】舞台「呪術廻戦0」で主演を務める小越勇輝 ■舞台と映像、どちらも難しいからこそ魅力的 ――芸能界入りのきっかけは? 3歳のときに、祖母の友人が知らないうちに応募したことがきっかけでした。受かったから行ってきなさいと祖母が言ったと聞いたんですが、全然覚えていないですね。 ――それから、俳優の道を歩んでいく自覚が生まれたのはいつ頃からなんでしょう? 小6から中1になる期間に「仮面ライダーキバ」(テレビ朝日)に出演したことです。そこで演じることや、撮影現場の楽しさを知りました。 年間通して大きな作品に出演したことで、それまでは大人に囲まれる世界でちゃんとしなきゃと思っていたくらいの気持ちが、やっと楽しいなと感じるようになったんですよね。 中学や高校へ進学するタイミングで、進路を考え直す機会もありましたけど、毎回この仕事をやっていきたいなと改めて思えて、気を引き締めていました。 ――27年の芸歴で、ターニングポイントになった作品はありますか? 高校では芸能科で、周りも同じように俳優を目指している同級生が多かったんです。売れている子もいるし、負けていられないという気持ちだったときに、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンのお仕事が決まったのは、自分にとってすごく大きな出来事でしたね。 それまで舞台の経験がなく、歌もダンスも積極的にはやってこなくて。友達とカラオケに行っても歌わなかったですし、ダンスレッスンも受けたことはあったものの上達しなかったというか…。 でも、“テニミュ”のオーディションが進むにつれて、だんだん歌もダンスも面白くなっていったんですよね。最初からこの役をやりたい!という気持ちもすごく強かったですし、絶対にここで頑張らなきゃと覚悟を決めました。 ――舞台と映像のそれぞれの違いや魅力、苦労はありますか? 舞台では空間を自分がどう埋められるか、どう人を惹きつけるか、というのをすごく研究しました。自分が踊っている動画を何度も見て、どうやったら格好よく見えるのか、どうやったら動きが大きく見えるのか、舞台に出はじめた頃はずっと考えていました。 逆に、映像は画でひきつけなければいけないところが難しいです。まばたき一つとっても表現が強すぎるとうるさいし、ナチュラルとそうじゃない部分の境界線は、作品の色によっても違いますし、微妙な表現の仕方のラインはずっと難しいなと感じています。 でも、舞台も映像もこういった難しさがあるからこそ、魅力的なのだと思います。表現の仕方が少し違うだけで、人間同士の気持ちのやりとりみたいな部分の根本はどちらも変わらないんですよね。 ■自分自身がやわらかくなったと感じる30歳 ――これまでの活動の中で、自分の成長を感じた瞬間があれば教えてください。 最近だと『HUNTER×HUNTER』THE STAGEです。久々の舞台作品だったからか、いつのまにか後輩が増えたことを感じました。ついこの間まで、自分が若い側のポジションだったのに、環境がずいぶん変わったなって。 先輩の立場になって、周りがどうやりやすくなるかなと常に考えていました。できるだけみんながやりやすい環境になったらいいなと思って、稽古中はキャスト陣に積極的に話しかけるように心がけていました。 ――座長をフォローしつつ、現場を作って…という役割に変わっていることを実感したんですね。 僕自身、共演者の人となりを知っている方がやりやすいんですよね。だからこそ、みんなが過ごしやすい空気感を作れたらいいなと思って、食事に誘ったりして。 30代を迎えて、自分自身がやわらかくなったのかな。まだまだとがっている部分はあると思うんですけど、とんがりが少し丸くなったように思います。何か疑問に思うことがあっても、距離を置いてみたり、俯瞰で見てみたり。 ――当時から、とがっていたという自覚があったのでしょうか? 以前は周りから「なんだか壁がある」と言われていました。そんなつもりはないけれど、知らず知らずのうちに自分を追い込んで、殺気立っているような空気感を自然とまとっていたのかなと、振り返って思います。昔は周りが自分と同じような目線でいてくれない、もっとみんなが同じ方向を向いてほしいという気持ちが強かったんです。 でも今はそれはまったくなくなりました。この瞬間に見ている方向が異なっていても、ゴールはみんな同じだからいいんじゃないかなって。ゴールに向かうスタイルも、やり方も、どんな道筋でもいいから、最終的に同じ場所にたどり着けたらいいよねと思えるようになってからは、気持ちが楽になりました。 30代になると人見知りなんて言っていられないと思うし、殺気立ってツンツンしててもなんだコイツってなるじゃないですか(笑)。そのあたりは、少し大人になったのかなと思いますね。集中しなきゃいけない瞬間はあるけど、今は自分の時間を大切にできるようになったことで、昔よりはウェルカムな雰囲気でいられるようになってきたかな。 ■死ぬまで役者という仕事を続けたい ――12月13日(金)に開幕する舞台「呪術廻戦0」WITH LIVE BANDでは、主演を務めます。 これから稽古なのですが、シリーズとして続く舞台で主演だけが変わるので、座組の形ができている中に途中参加するんですよね。まだ見えない部分はあるんですけど、作品に没入させられるように、主役としてしっかり舞台に立つだけだなと感じています。 「呪術廻戦」はもともと好きな作品で、新しい舞台があるなら乙骨憂太役をやりたい! と言っていたんです。それが実際に決まって、自分に任せてくださったことが本当にありがたいですね。期待に応えるべく、とにかく自分ができることを精いっぱい、その瞬間その瞬間にやっていきたいです。 ――先ほど自分の時間も大事にするようになったとお話がありましたが、プライベートの過ごし方も変わりましたか? コロナ禍がきっかけで、芸人さんのラジオを聞いてみたら面白くて、ハマっちゃいました。ここ数年は時間があると、3~4時間ほど散歩しながらラジオを聴いています。ラジオは週に10本以上聴いて、リフレッシュしていますね。 オードリー、三四郎、バナナマンあたりは自分の中で定番で、それと今ハマっているのが「ロバート秋山の俺のメモ帳!on tuesday」(BAYFM)。秋山さんがとにかくふざけていて、内容がなくて(笑)。そのバカバカしさが本当に面白いんです。気分を変えたいときは「トーキョー・エフエムロヒー」(TOKYO FM)を聴いています。ヒコロヒーさんがいろんな曲を紹介してくれる番組で、落ち着いた雰囲気がいいんです。 それと激辛が好きで、グルメフェスに行くこともありますね。わりと辛いものが平気で、役者仲間と合間に行くこともあります。 ――最後に、今後の目標を聞かせてください。 死ぬまでこの仕事を続けるのが目標です。この仕事をしているからには、絶対にもっとメジャーになっていきたい。第一の目標としては、まずは小越という名字をすんなり「おごえ」と読んでいただけることですかね。「おごし」とか「こごし」って言われたりするので、まずは僕の名前が広まった証として目指したいことです。 ――代表作が欲しいなどの野望はありますか? もちろんあります。「あの役の人」というイメージは、マイナスになることもあるかもしれないですけど、僕は印象付けられるだけで価値があることだと思うんです。 すごく性格の悪い役がヒットして、あの人嫌いと言われても、世間に浸透することに意味がある。そういった、人に影響を与えられるような役をたくさんできたらいいなって思いますね。 ◆撮影=岡本武志 取材・文=イワイユウ スタイリング=小田優士 ヘア&メーク=小竹珠代 衣装協力=Karaln、MUZE GALLERY