『Grasshopper vol.28』 下北沢DaisyBarを舞台にマママ・ダ・マート、komsume、Cloudyが共演【ライブレポート】
「前にやってたバンドじゃスカスカのDaisyBarでしかやったことがなかったから、こんなにパンパンでやるのは初めて。今日はそういう特別な気持ちです」。小柴岳人(vo/g)のこんな言葉で幕が上がった最終走者・Cloudyのライブは、夢と現実の狭間で足掻く彼らの今をダイレクトに伝えていた。空白を彩る守屋浩次(b)のメロディアスなベースサウンドや、ボーカルと同じ波形を描くギターのメロディーが印象的な「命を燃やしている」で幕を切り下ろし、喉を擦り減らすと言うべきボーカリゼーションがタイトルに相応しく刹那的に躍動すると、ライトは赤から青へ移り変わる。5日間連続でのライブだったというCloudyは、体力も精神も使い果たしながら進化を続けている真っ最中。全速力で駆け抜けている現在地を「命を燃やしている」で早々に提示したからこそ、夢を追いかける惨めな現実と対峙する「セプテンバーナイン」が相互作用的に今この瞬間の美しさを揺るぎないものにしていく。 「こんな景色をDaisyBarで見ることができてうれしい。特別なハコだから、観てくれてありがとう。前のバンドメンバーと久しぶりに会った時の歌」と告げて披露された「生きてる限り」では、社会人として生きていくことを選んだ人生と音楽の夢を追い続ける道がふたりの会話によって対照的に描かれる。しかし、地に足のついた生活を選ぶことと、夢へと手を伸ばすことのどちらが正解かを問うているわけではない。〈そもそも人生正解なんてもんがあってたまるかよ〉と叫んでいるように、彼らは葛藤を抱えながら一歩一歩進んでいくこと自体の尊さを刻みつけているのだ。それは、私小説なリリックでもって無限の選択肢が渡されることへの震える喜びと怖ろしさを紡ぐ「バンドマンと金髪女」も同じこと。 本編最後を締めくくったナンバーが「さめない夢」だったという事実も、この日が彼らにとって夢と現実を見つめ直す契機だったことの証ではないか。そして、このタイミングで彼らが今までの歩みを振り返ったのは、冒頭で小柴が話していた通り、DaisyBarが大切な場所であるからに違いない。それではなぜ、4人は幸福ばかりではない生活で理想を叶えるために奔走し続けているのか。その答えは、小柴の伸びやかな弾き語りからアンコールでプレイされた「よどんだ生活の中で」にあった。<大切なことなど一つだけ 最後に残るのは一つだけ よどんだ生活の中でただ僕は 僕を歌いたいだけ>。いつか骨になる前に、この音楽の碑を建てるため。彼らは今日も歌い続けている。 こうして終止符が打たれた『Grasshopper vol.28』。マママ・ダ・マート、Komsume、Cloudyの3組も『Grasshopper』もまだまだ始まったばかり。またライブハウスで再会する日まで、それぞれの道は続いていく。 Text:横堀つばさ <公演情報> 『Grasshopper vol.28 supported by チケットぴあ』 2024年 12月9日 東京・下北沢DaisyBar 出演:Cloudy / komsume / マママ・ダ・マート <次回公演情報> 『Grasshopper vol.29 supported by チケットぴあ』 2025年1月20日(月) 東京・下北沢CLUB Que 開場18:20 / 開演19:00 出演:Lala / ミーマイナー / mill meals 『Grasshopper presents. Jump Higher 2025 supported by チケットぴあ』 東京・渋谷 Spotify O-WEST、O-nest 出演 : Atomic Skipper/Laughing Hick/Re:name and more...!
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