【次世代太陽電池】普及の可能性探って(10月9日)
国と県は次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の実用化に向け、Jヴィレッジ(楢葉・広野町)など県内3カ所で発電の実証事業を今年度内に始める。来年度も公共施設にモデル的に設置する予定となっている。再生可能エネルギーの新たな発電源として普及の可能性を探るよう求めたい。 ペロブスカイト太陽電池は従来のパネル状のシリコン型に比べて軽く、柔軟性にも優れ、フィルムのように曲げられる。建物の壁面や窓に貼ることが可能な上、早朝や夕方でも発電できるとされる。平地の少ない国内で、太陽光発電活用の場がさらに広がると期待の声が、官民から上がっている。 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が発生して以降、再エネの導入が県内で進んでいる。けん引役となっているのが太陽光発電だ。昨年度時点で県内の導入済み再エネ3961メガワットの8割を占める。2040年度までに県内エネルギー需要の100%を賄うとする県の目標を達成するには、風力、地熱など他の再エネに比べて導入が容易な太陽光発電のさらなる普及が欠かせないだろう。
経済産業省によると、大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の開発に伴い、本県を含め全国で太陽光パネルの設置に適した平地は少なくなってきている。産業界は再エネのさらなる普及には、家庭の屋根以外の壁や窓にも設置できるペロブスカイト太陽電池が有効と見て、研究開発を進めている。 エネルギー安全保障の観点からの利点も大きい。従来型太陽電池の主原料である結晶シリコンは中国が主産地で、国際情勢によっては供給が不安定になる懸念がある。ペロブスカイト太陽電池の主原料であるヨウ素の生産量は日本が世界2位で、国内から安定調達が見込める。 ただ、人体に有害な鉛を使用することや耐久性が難点とされる。安全面での技術が確立されなければ、普及は進まないとの指摘もある。経産省が5月に発足させたペロブスカイト太陽電池の官民協議会は、メーカーなど約240の国内企業・団体で構成し、県内の自治体も参加している。普及を大きく前進させる解決策を、官民一体で見つけてほしい。(神野誠)