昌平、納得の5得点とまさかの4失点となった2つの理由
2月12日、令和5年度埼玉新人戦(新人選手権大会)の県大会準々決勝が埼玉県内2会場で行われ、昌平が市立浦和を5-4で下し、準決勝にコマを進めた。 【フォトギャラリー】昌平 vs 市立浦和 見ている側には面白いゲームだった。後半26分時点で5-1。昌平のワンサイドゲーム。勝利はほぼ手中に収めたと思いきや、だからサッカーは恐ろしい。市立浦和はアディショナルタイムを含めた残り時間で3得点の猛攻。昌平は1点差にまで詰め寄られた。 「正直、ドキドキしました」 このゲームで指揮を執った昌平 鈴木琢朗コーチの偽らざる気持ちだ。 前半の昌平は首尾よく2得点をあげ、与えたシュートは1本と完ぺきに近い内容だった。にもかかわらず、なぜ、終盤、崩れたのか。 そこには2つの要因がある。ひとつは交代カード。 「ボールを奪う選手が交代により少なくなってしまいました。守備で効いた選手を替えた分、前から制限がかけられず、ボールを奪えないシーンが多くなりました(昌平・鈴木コーチ)」 新人戦は文字通り、新戦力発掘と経験を積ませる場。さまざまな選手を起用したことが今回は裏目に出てしまった。 ふたつめは心理的動揺。 5-1以降の展開を昌平GK1白根翼(2年)は「全体の守備が緩んでしまい、自分自身も焦ってしまいました。その焦りが全体に伝染したかもしれませんし、相手の勢いに飲まれてしまいました。正直、早く試合が終わってほしいと思いました」と振り返る。 その昌平に動揺を与えたのが市立浦和FW11横井葵(2年)のドリブル。裏のスペースに走るとゴールにむかって一直線。とにかく恐ろしく速い。劣勢も手伝い、プレーに迷いがなかったのも功を奏した。放った3本のシュートはいずれも後半の終盤。そのうち2つが得点。残りの1本は決定機。昌平守備陣には脅威となったはずだ。 FW11横井について市立浦和・大野恭平監督は「どことやっても相手をぶち抜けます。ドリブルの馬力がすごく、抜けきってしまう。また小回りが利いて、内でも外でもプレーができるようになりました」と評価。 延長戦というシナリオは十分にあった。かなりひりつく試合だった。 4失点したものの、5得点をあげた昌平。目を引くのは決定力の良さ。前後半のシュート数は11本。いくつか決定機があったことを踏まえると、作ったチャンスを確実に決めた印象が強い。 その要因について、1ゴール3アシストのMF6甲斐田裕大(2年)は「みんなが関わって細かいパスでつないでいけたのがよかった。全員で崩しきって、決めて当たり前くらいの状況を作れたからです」と語った。 このことを示すように鈴木コーチによれば、攻撃は選手の発想を重視しているとのこと。つまり互いのプレースタイル、特長を理解しあったうえでよい連携ができ、決定力の高さにつながったといえる。 勝ったとはいえ、昌平にとって、4失点はやはり気になる。結果を受け、鈴木コーチは「大舞台に立ったとき、もっと緊張であがってしまう。きょうは新人戦。しかも自分たちのホームだったから、きょうの結果だったかもしれない。だから同じことが起きないようにきょうの経験をいかしてほしい」と選手に伝え、準決勝の西武台戦に生かす。 (文・写真=佐藤亮太)