AIを活用し世界が注目 芥川賞作家・九段理江 藤井キャスターが聞く、いま大切にしたい『言葉』
日テレNEWS NNN
芥川賞を受賞した作家・九段理江さん。AIが作った言葉をそのまま作品に取り入れ、世界から注目されています。news every.の藤井キャスターが九段さんにインタビュー。いま大切にしたい『言葉』や心がけていることを聞きました。 【画像】第170回芥川賞発表 九段理江の『東京都同情塔』に決定 2021年に作家デビュー 九段さんは、2021年に作家デビューしたその年に『Schoolgirl』が芥川賞にノミネートされるなど、作品を出す度に高い評価を受けている、いま注目の作家です。そして先月、4作目となる『東京都同情塔』で芥川賞を受賞しました。
■作品にAIを活用したワケ
作品の舞台は、犯罪者が快適に暮らすための高層タワー建設が計画される架空の日本。主人公の建築家が相談相手として人工知能・AIと対話する様子が描かれています。 先月の受賞会見で「だいたい全体の5パーセントは生成AIの文章をそのまま使っている」と発言し、話題となりました。実は、本文中のAIのセリフは、実際に九段さんがAIに質問を入力し、返ってきた答えをそのまま活用しているんです。 この手法は海外メディアでも取り上げられ、「本の執筆にAIが協力したことを認めた」などと、大きな反響がありました。さらに、イギリスの大手出版社が翻訳権を取得し、世界各国での出版に向けて動き出しています。 藤井:生成AIがこの世に出てきたときにこれは使えると思われたんですか? 九段:この小説に関しては生成AIとか、AIが主人公の思考・生活に侵食してきているっていう状況を描きたかったので。アナウンサーの方を主人公にしたいときってアナウンサーの方からお話聞きたいでしょ? 藤井:そうですね。 九段:だから、生成AIを小説に出すために本当に生成AIにお話を聞いているっていう。 藤井:つまり生成AIにインタビューした、というものが作品に投影されてるわけですね。おもしろい!
■AIを活用したからこその苦悩
実際に生成AIを活用したという文章がこちら。 主人公「君は、自分が文盲であると知っている?」AI「いいえ、私はテキストベースの情報処理を行うAIモデルですので、文盲ではありません。そして「文盲」は、侮辱や軽蔑の意味合いを持つ可能性のある差別的表現です。」 主人公に反論する形で無機質な言葉を返すAI。そんなAIの文章に触れたからこそ、血の通った人間の言葉を生み出すことにとても苦労したといいます。 九段:言葉で、言葉の小説を書かなければいけない。自分が本当に苦しかった。頭おかしくなりそうでしたよね。これ書いてて。 藤井:でも自分が進んできた道で、自分が選んだルートですから、その苦しいのはもう自分のせいと思うしかないんですか? 九段:そうですね。もう、一度やるって決めたから。絶対に世の中に出したいなって思ったから。 藤井:最後はそういう、執念のようなもので、賞って決まるんですかね? 九段:言葉とか文章にどれだけ妥協しなかったか、みたいなところ…? 藤井:今あの背骨に雷落ちました。勉強になります。