痩せ細り糞便だらけ、奇形、多頭飼育崩壊…小学校のウサギ小屋のおぞましい現実、そもそも飼うのが難しい→相次ぐ「保護」→学校単位の飼育は限界なのか?【R調査班】
飼うのが難しいウサギがなぜ学校飼育の「定番」に?
ウサギがなぜ学校で飼育される動物の“定番”になったのかは諸説ある。保護団体の藤田さんは、給食の残飯を与えれば餌代が少なくてすむという“誤解”や、犬やネコよりも飼いやすいという“イメージ”も影響していると考えている。 一方、小学校の学習指導要領(解説)には「どのような動物を飼うべき」という指針はない。動物の選定は「各学校が地域の実態に応じて」(1989年)→「各学校が地域や児童の実態に応じて、児童の身近にあり、継続的に世話をすることができるもの」(1999年)→「各学校が地域や児童の実態に応じて適切なものを取り上げる」(2008年~)と多少の変遷はあるものの、具体的な動物名は挙げられていない。 ただ、文部科学省の委嘱研究「学校における望ましい動物飼育のあり方」(日本初等理科教育研究会)には、ウサギ、モルモット、ハムスター、ニワトリ・チャボの飼い方がイラスト付きで説明されており、これらが「定番」化していることをうかがわせる。福岡県教育委員会の担当者は、はっきりとした理由はわからないと断った上で「子供たちに人気があるのは事実です。ウサギはすぐ増えて飼いやすい。学校間で譲ったり、引き受けたりなどの交流もあるようです。そのため、多くの学校で飼われているのではないでしょうか」と説明した。
学校単位の飼育は果たして現実的なのか?
「お顔を見せて!かわいいね」と訪問者の顔がほころんでいたのは「ウサギ譲渡会」。今年11月26日、久留米市でネコの譲渡会会場の一角を借りて開かれたものだ。新しい飼い主を待つのは、多頭飼育崩壊の起きた小学校から預かったウサギたちだ。 保護団体・江頭さん「足を負傷しています。学校でけがをして、そのまま関節が固まってしまったのだと思います」 ウサギの飼育相談を受ける愛護団体「リバティ」の代表は、現在の学校の環境では「適切な飼育は難しい」と感じている。 藤田敦子代表「ウサギは弱みを隠す生き物なので、体調が悪いと思った時は手遅れのこともあります。ちゃんと生態を勉強して飼育しなければなりません。死んだ時は寿命と片づけるのではなく、“なぜ死んだか”を子供たちが勉強しなければ、そこにウサギがいる意味はないと思います」 生命の尊さを学ぶための動物飼育。ことウサギについては、きめ細かな温度管理のための予算、休日の餌やりや長期休みの世話のための人員も欠かせない。果たして、多くの学校でそれができているのだろうか、と江頭さんは懸念する。実態として満足に飼育できないのであれば、希望する飼い主に譲渡することも提案している。 痩せ細り糞便だらけ、奇形、飼育崩壊…。『児童の夢が広がり、多様な活動が生まれる(学習指導要領解説)』はずだったウサギ。そのような理想とはかけ離れた劣悪な環境に置かれ、悲惨な姿で保護されたウサギたちは、今のように学校単位でウサギを飼い続けるべきなのか一石を投じている。