高校サッカー矢板中央に191センチの超大型FW・望月謙が出現!
キックオフ前に配布されるメンバー表のサイズ欄には、矢板中央(栃木)の望月謙(3年)の身長は「190」と記されている。ただ、体重を含めた数字はかなり前に登録されたもの。ガーナ人の父と日本人の母の間で、埼玉県草加市で生まれ育った大型ストライカーは苦笑しながら打ち明ける。 「今は191cmです。3年生になって、また1cm伸びたんです」 首都圏の8会場で2回戦の16試合が行われた、2日の第97回全国高校サッカー選手権。ニッパツ三ツ沢球技場の第1試合では、規格外の高さと身体能力を搭載するニューヒーローが2度も咆哮をとどろかせ、日章学園(宮崎)を2-1で撃破する原動力になった。 最初は前半20分。左サイドからDF内田航太郎(3年)が上げたクロスに、FW伊藤恵亮(3年)が果敢に飛び込む。飛び出してきた相手GK、クリアしようとしたDFと激しく交錯するなかで、ボールはファーサイドへ流れた。そこにノーマークの望月がいた。偶然ではなく必然だった。 「こういう試合は、綺麗なゴールはなかなか決まらない。恵亮が競りにいった瞬間、絶対にこぼれてくると思ったし、チームのファーストチャンスだったので絶対に決めてやる、と。試合前の練習からこぼれ球を意識していたし、FWの仕事としてしっかりと思い切って蹴りました」 無人のゴールへカバーに入った相手選手に当たりながらも、強烈な弾道がネットを揺らす。0-0の均衡を破る貴重な一撃は、望月にとっては全国選手権通算5試合目で決めた待望の初ゴール。「やっと入った」と胸中で叫んだ「14番」は、派手なガッツポーズを作っていた。 2度目は後半15分。ワンツーで左サイドを抜け出し、相手ペナルティーエリアへ迫った直後だった。目の前には2人の相手が待ち構える。矢板中央の高橋健二監督をして「これまでの彼なら後ろを向いて、味方を使っていた」と言わしめた望月が、さらなるドリブル突破を試みた。 データになかった分だけ相手も面食らったのか。ペナルティーエリアへ侵入したところで望月が倒され、直後に主審の笛が鳴り響いた。リードを広げるPKの獲得に、望月を含めた全員が雄叫びをあげる。MF飯島翼(3年)が冷静に決めた一発が、結果的に決勝点となった。 「自分はあまりドリブルするタイプではないんですけど。練習中に『高い位置でボールを持ったときは積極的に仕掛けろ』とよく言われていて、それが頭のなかをよぎって『勝負するしかない』と」