「CO2抑制=低燃費」自動車がエコカーであふれる理由
しかし、この制度も震災で壊れた。生産設備が毀損した企業では排出枠が丸々余り、経済活動全体が混迷した。景気の先行きがわからない企業は生産を見合わせたので、追加の枠を必要とする企業が無くなった。国内では今や排出枠の相場はゼロ。タダでやり取りされている状態だ。 東日本大震災を機に、日本では世界の気象環境より、目前の問題として重大な原発と国内復興の問題が優先されている。原発事故は世界も決して無視できることでは無いので、国際的にも「何が何でもCO2枠目標を遵守しろ」という方向には今のところ無い。世界と日本でだいぶ事情が違うことはお解りいただけたと思う。 今回は世界では何故CO2の抑制が求められているかという説明をした。日本国内では短期的にCO2削減のメリットが少ないとしても、長期的にみればそちらに向かうのは明らかだ。しかも、世界でクルマを売って行こうと思えば、どうしてもCO2排出量を減らすしかない。CO2は、もはや自動車にとって避けられない問題なのである。 そして自動車にとってCO2排出量が少ないということはすなわち低燃費ということなのだ。CO2を削減したければ、燃料を出来る限り燃やさないことだ。つまりCO2削減とは、事実上低燃費技術の向上を指すことなのだ。次回は低燃費のための自動車の動力源、つまりエンジンやその仲間のシステムについて概論をまとめてみたい。 (池田直渡・モータージャーナル)