62億円かけて「効果が不明のガソリン価格調査」だけじゃない…まだある「税金の無駄遣い」総額580億円【会計検査院が公表】
会計検査院は11月7日、令和4年(2022年)度の決算検査報告を公表しました。特に話題になっているのが、資源エネルギー庁のガソリン価格モニタリング調査(かかった費用62億円)が「効果不明」と指摘された点です。しかし、その他にも合計約580億円の「税金の無駄遣い」が明らかになっています。会計検査院の決算検査とはどういうものなのか。ガソリン価格モニタリング調査の検査結果についても触れながら解説します。
会計検査院がチェックする「税金の無駄遣い」とは
会計検査院の決算検査報告に記載される「税金の無駄遣い」は、正確には、大きく分けて以下の3種類です。 1. 不当事項 2. 意見を表示しまたは処置を要求した事項 3. 指摘に基づき改善の処置がとられた事項 上から順に「無駄遣い」の程度が重大なものとなっています。 「1. 不当事項」は、法令・予算に違反した、または不当と認められたものをさします。 「2. 意見を表示しまたは処置を要求した事項」は、会計検査院が関係大臣等に対して意見を表示し、または処置を要求したものをさします。 そして、「3. 指摘に基づき改善の処置がとられた事項」は、2の意見表示・処置要求を受けて改善の措置がとられたものをさします。 会計検査院の検査の対象となるのは以下の機関の行為です。国からお金が出ている事業はすべて対象になっています。 【会計検査院の検査対象】 ・国(省庁を含むすべての会計) ・国が出資している政府関係機関 ・独立行政法人等の法人 ・国が補助金、貸付金その他の財政援助を与えている地方自治体 ・国が補助金、貸付金その他の財政援助を与えている各種団体
資源エネルギー庁「ガソリン価格モニタリング調査」の問題点
SNS等で話題になっている資源エネルギー庁によるガソリン価格のモニタリング調査は、サービスステーションで販売されているガソリンの価格を電話での聞き取りや現地視察によってモニタリングするものです。 これは、ガソリン価格を抑制するための補助金(燃料油価格激変緩和補助金)の効果を高めることを企図したものです。 燃料油価格激変緩和補助金は、石油元売事業者に対し、ガソリンの卸売価格を引き下げるための原資を提供することによって、間接的にガソリンの小売価格を抑えるものです。つまり、小売業者の仕入れ価格を抑える機能はあっても、小売価格を直接抑えるものではありません。 そこで、資源エネルギー庁は、小売価格が適切に抑えられるよう、全国の小売価格の推移をモニタリングすることによって実効性を確保するとしていました。民間の事業者に委託して電話調査と現地調査を行わせ、これによって、単に小売価格の調査にとどまらず、小売業者に対し価格抑制を促すことを企図していました。 しかし、資源エネルギー庁はそれ以前から、毎週、電話によるガソリン価格調査を実施し、その結果を公表していました(これを「本庁調査」といいます)。 そこで、会計検査院は、元来の本庁調査に加えて、それとは別にモニタリング調査を行う意義について、詳細に検証したのです。 会計検査院の調査結果においては、以下の問題点が指摘されています。 ・電話調査を行う期間、回数、架電先が本庁調査と重複していた ・調査結果が公表されていない ・価格が抑制されていないスタンド、電話回答を拒否したスタンドに対して現地調査を行ったが、小売価格の把握にとどまっていた ・電話調査・現地調査の結果に基づく分析を行っておらず、価格の抑制に寄与しているのか等については不明 これらをもとに、「単に全国の小売価格の推移を把握するのであれば、本庁調査の結果を活用することにより十分対応可能である」「両調査の必要性も含めて、その実施内容や実施方法、報告内容等について十分に検討することが望まれる」と結論付けています。