高報酬のヘッジファンドに円金利トレーダー流出、人材逼迫に拍車
(ブルームバーグ): 日本に拠点を置く外資系証券などから、より報酬の高いヘッジファンドへの円金利トレーダーの移籍が相次いでる。日本銀行の政策変更を受け債券取引が活発化する中、収益拡大に向け人材獲得競争が激しさを増している。
事情に詳しい複数の関係者によると、過去1年半においてモルガン・スタンレーMUFG証券やシティグループ証券などを含めた金融機関から少なくとも12人以上の円金利トレーダーがヘッジファンドへと移籍した。今後数カ月のうちに、さらに数人の移籍が見込まれている。
関係者によれば、円金利トレーダーの積極的な採用に乗り出しているのは、ブルークレスト・キャピタル・マネジメントやキャプラ・インベストメント・マネジメントといった海外ヘッジファンド。米ミレニアム・マネジメントやシンガポールのダイモン・アジア・キャピタルも複数人を採用したという。
モルガンMUFGからは、1月にマネジング・ディレクターに昇格したばかりの人材ら2人がヘッジファンドに移籍する。そのうちの1人はブラーマン・キャピタル・マネジメントに移籍予定。ブルークレストはこのほどシティ出身者を採用したほか、他の金融機関からも2人が移籍した。
モルガンMUFGとシティ、キャプラ、ブルークレストの各広報担当者はコメントを控えた。
こうした動きは、日銀の政策変更を背景に円金利トレーダーへのニーズが一段と高まっていることを示している。日銀が2016年にマイナス金利政策とイールドカーブコントロール(長期金利操作、YCC)を導入した後、円金利は低位に張り付き、日本国債の取引量も大きく減少。債券市場参加者は収益機会を失った。しかし、22年末に日銀がYCCの修正に乗り出すと状況が改善。今年3月には両政策が解除され「金利のある世界」が復活した。
東京に拠点を置く金融人材紹介会社ディバイン・ソリューションズ・ジャパンのマネジャー、アリスター・ラムズボトム氏は「金融機関は多くのトレーダーをヘッジファンドに奪われている。すべてのヘッジファンドが目を光らせており、人材が出てくると即面談を求めるという状況だ」と指摘する。