村上春樹 人生をもう一度やり直したい?「小説家的には、人生なんて一回で十分です」
<クロージング曲> The Dave Brubeck Quartet「Everything Happens To Me」
マット・デニスの曲だけを集めたアルバムを出しているジャズ・ミュージシャンは今のところ、デイヴ・ブルーベック・カルテットしかいません。「エンジェル・アイズ」というタイトルのアルバムなんですが、これがとても素敵な出来で、僕の愛聴盤になっています。その中から「Everything Happens To Me」を聴いてください。ポール・デズモンドのアルトサックスがとてもチャーミングです。 * いかがでしたか? マット・デニスの音楽、気に入っていただけましたでしょうか? ずいぶん昔の懐かしい音楽になってしまいましたが、今聴いても思わず口元がほころんでしまうような、優しさと洒脱(しゃだつ)さに満ちています。 * 今日の言葉は、アメリカのある女優の言葉です。女優の名前はわかりません。ちょっと前にアメリカのテレビを観ていたら、金髪の女性がインタビューを受けていて、女優の誰それとクレジットされていたのですが、ちょっとぼんやりしていて名前は読み取れませんでした。年齢はたぶん60代くらい。誰だったんだろう? 彼女はインタビューに答えてこう語っていました。 「人生って二回あるべきなのよね。一度はリハーサル、二度目が本番、でも現実には一度しかないから、それでなんとかやっていくしかないわ」 それを聴いて、僕は感心しちゃいました。うーん、いかにも女優さんらしい発想ですよね。人生二回説。一度目はリハで、二度目が本番。なるほどね。 でも僕の個人的感想を言わせていただけるなら、小説家的には、人生なんて一回で十分です。今更やりなおしなんかしたくない。めんどくさいから。 あなたはいかがでしょう? 人生、もう一度やりなおしたいですか? それとも1回で終わりにして、あとはゆっくり休みたいですか? 猫山さんはいかがでしょう?(にゃ―) (TOKYO FM「村上RADIO~マット・デニス・ソングブック~」2024年5月26日(日)放送より)