肘に怪我も「上がって来い」 “客寄せ”の1軍で快投…高卒ドラ1に「ホンマに痛いんか」
「2回くらいしか投げられません」が…6回1失点で2勝目
とはいえ、3試合目の登板(9月3日大洋戦、横浜)も勝ち負け関係なしながら1回を投げて打者3人でピシャリ。デビューから計3試合4イニングを投げて、打者12人を無安打に抑えたことで、4試合目の登板(9月6日ヤクルト戦、ナゴヤ球場)では先発のチャンスが与えられた。だが、右肘にはまだ違和感があり「『いや無理ですよ、肘がまだ。2回くらいしか投げられません』と言ったら『2回で代えてやるから先発しろ』って言われたんです」。 結果は6回2安打1失点で2勝目をマーク。2回に杉浦亨外野手に本塁打を浴びて失点したのが、プロ初被安打でもあった。「杉浦さんには弾丸ライナーで打たれましたね。肘が痛かったけど、6回を投げて、あとの3イニングは(鈴木)孝政さんが(打者9人)パーフェクトで抑えてくれて勝ったんですよね」。 その試合で牛島氏はプロ初打席初安打も記録した。「(ヤクルト先発の)鈴木康二朗さんからセンター前ヒット。すーっと放ってくれた真っ直ぐを打ったんですが、次の打席はシュートもスライダーも来たんですよ。どっちもえぐかったです。(プロで)勝っているピッチャーはこうなんだなって思いましたね」。この経験もプラスにしたようだが、それにしても右肘の状態の悪さを感じさせない結果続きだ。 「試合になったらアドレナリンが出て痛みなんか忘れてしまうじゃないですか。でも、結果が出たら、“お前ホンマに肘が痛いんか、2イニングしか投げられないとか言っていたけど嘘言っているだろう”とかなって……」と苦笑い。デビュー時からそんなことを言われるルーキーもそうはいないだろう。
稲尾和久コーチの質問に「状況によって変わってくるのでわかりません」
1年目の牛島氏といえば、稲尾和久投手コーチの投手陣への「2死満塁ツースリー(フルカウント)で何を投げるか」の問いに対して、他の投手が得意球などを口にした中、「どうやってツースリーになったか、状況によって変わってくるのでわかりません」と答えたことでも知られる。 「怒られてもいいやと思って言ったんですが、『それでいいんだ』って言ってもらって、ああよかったの世界でしたけどね。稲尾さんはのちに講演とかでも、この時の僕の話をしてくれたそうで、高卒1年目でそんなことを言っていたんですよと褒めてくれていたよって聞いて、うれしかったですね」 ちなみにアミューズメント事業などを手がけ、現在、牛島氏が代表取締役を務める「株式会社ツースリー(本社・名古屋市、1988年設立)」の会社名は、この稲尾氏とのエピソードにおけるカウント「ツースリー」からつけたという。「稲尾さんに褒めてもらったってことでね」。 首脳陣に「本当に怪我をしていたのか」と大真面目に疑われたり、西鉄時代に「鉄腕」と言われた名投手でもある稲尾投手コーチを理論でうならせたり、19歳のプロデビューの年から牛島氏は中日で伝説を作った。そして、それはまだまだ……。2年目以降もグラウンド内外で大物ぶりを発揮していくことになる。
山口真司 / Shinji Yamaguchi