1980年代に採用されたマニアックな日本車の装備3選
“あると乗る人が喜ぶから”
クルマの歴史は発明の歴史。基本型は1960年代に完成されたといわれるが、小さな進化は続いている。珍発明が頻出したのは、1970年代と続く1980年代だ。 「クルマのスタイルでいえば(1955年の)シトロエン『DS』で完成している。理想主義の最高傑作。でもそのあとも、延々と新車が作られるのは、そうしないと、私たちが失業してしまうから」 すこし前にそう言い放った、欧州の大自動車メーカーのヘッドオブデザインがいた。笑う。これが自動車の真実かもしれない。 いっぽう、小さな発明に腐心してきた人たちもいる。その一部をここで紹介するのだけど、なかには、ギミック(こけおどし)と一蹴するのがはばかれるものもある。なぜなら“あると乗る人が喜ぶから”というような、開発者の思いを感じとれるからだ。
(1) トヨタ「マークⅡ」(6代目):サイドウインドウワイパー
トヨタが、1988年発表の6代目マークⅡにオプション設定したのがサイドウインドウワイパーだ。 前席サイドウインドウの先端についた小型ワイパーで、目的は雨中にアウトサイドミラーの視認性を確保すること。ウォッシャーまでついていた。 アウトサイドミラーの視認性は、当時けっこう悩ましい問題だった。日産自動車は1980年発表の初代「レパード」のフェンダーマウンテッドミラーにワイパーを用意していた。 サイドウインドウの水滴のせいで、アウトサイドミラーが見えにくいとき、サイドウインドウを下げて上げて、雨滴をとった経験をもっている人は多いのではないだろうか? なくなってしまったのにはいろいろ理由があると思う。現在こんな装備がないのは、空力の改良のおかげだろう。雨や雪どけのなか高速道路を疾走しても、車体側面の空気の流れのおかげで、汚れが上に跳ね上がってこない。 そういえば、フェラーリ「プロサングエ」はハッチゲートをそなえた車型だが、リアウインドウにワイパーをもたない。空力を考えた車体設計のおかげで、下からの汚れの跳ね上げがないからだ。私は雨中の田舎道を1000kmぐらいドライブしたとことがある。ほんとに汚れていなかったのには驚いた。 運転支援システム用の(カメラやレーダー)センサーを車外につけているクルマも、雨や雪や汚れの問題に悩まされてきた。カメラは車内に移すようになってきているが、汚れをとる仕組みとして決定的なものはない。クルマの歴史は汚れとの戦いの歴史である。