東海第二原発事故時における放射性物質の拡散シミュレーション結果と避難の規模
再稼働を目指している日本原子力発電・東海第二原発で事故が起きた場合放射性物質はどう拡散するのか茨城県がシミュレーションの結果を公表しました。
公表されたシミュレーションでは東海第二原発に設置されている複数の安全対策設備が一斉に機能を失う2通りの事故を想定し専用の解析ソフトを使ってその際に屋外に漏えいする放射性物質の量を算出。さらに気象条件を変えてそれらがどう拡散するのかを22通り試算しています。 このうち炉心損傷が発生し原子炉を減圧するために内部の気体を外に出す際に放射性物質をこし取る「フィルタ付きベント装置」が設計通り作動したケースでは放射線量が避難の基準に達する地域は生じないとしています。 一方で炉心損傷が発生したものの「フィルタ付きベント装置」が使えないとした想定した“より厳しい事故のケース”では、放射性物質の漏えいから24時間経過した時点で地域の放射線量が基準値を上回り、避難対象者が最も多くなるのは風が南西方面に流れる場合で、那珂市・ひたちなか市で10万5191人。事前に予防的な避難する原発のある東海村の6万5000人を加えると避難対象者は合わせておよそ17万人となっています。 次いで多くなるのが風が北方面に流れる場合で、日立市で9万2085人東海村を加えるとおよそ16万人となっています。
このシミュレーションを茨城県の依頼を受けて行った日本原子力発電では“より厳しい事故のケース”について互いに離れた安全対策設備が一斉に使えなくなったという設定を、あえてしたもので「工学的には考えにくい」としています。またこのシミュレーションを評価した専門家らによる県の第三者検証委員会はこうしたケースが生じるのは「国の審査において対象外となっている隕石の落下やミサイル等」と説明しています。 東海第二原発は、5年前に再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査に合格し、来年9月までの予定で安全対策工事が進められています。 ただ30キロ圏内に全国の原発で最も多い92万の人口を抱えていて事故の際の避難先や移動手段の確保が難航。広域避難計画の策定が求められる30キロ圏内の14市町村のうち計画策定をしたのは5つにとどまっています。 今回のシミュレーションについてこれらの自治体からは「極端な事故の想定を含み住民の不安をあおりかねない」「数字が一人歩きする」などと懸念する声が上がっています。 一方で茨城県では同時に避難をしうる人口の規模などをケースごとに試算し参考にすることで・渋滞の発生などを考慮した避難に要する時間・バスや福祉車両など用意しておくべき移動手段の量などの検討に生かし避難計画の実効性につなげたいとしています。ある茨城県の関係者は「92万人の呪縛から解かれ難航する広域避難計画の策定が進むきっかけになれば」と話しています。