心理社会ストレスによる症状、個人差を生み出す脳内メカニズム解明 名古屋市立大
名古屋市立大学らの研究グループは、「マウスを用いた実験で、心理社会的ストレスに晒された際に表れる症状の脳内メカニズムを発見した」と発表しました。この内容について舘野医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
発表した研究内容とは?
編集部: 今回、名古屋市立大学らによる研究グループが発表した研究内容について教えてください。 舘野先生: 名古屋市立大学らの研究グループは、ストレス症状の個人差を生み出す脳内の仕組みについて調べました。研究成果は学術誌「Neuron」に掲載されています。 研究グループは、精神疾患において頻繁に認められる「社会性低下」と、快感が消失した状態の「アンヘドニア」の2つに着目しました。そして、社会性低下とアンヘドニアの有無の組み合わせにより、4パターンのマウスのグループを用意して脳内神経活動を調べました。 その結果、各タイプに特徴的な神経回路の変化が明らかになりました。具体的にみると、社会性低下とアンヘドニアの両方の症状を示すタイプでは、内側前頭前野-視床室傍核の活動が顕著に低下していました。 その一方で、社会性低下のみを示すタイプでは内側前頭前野-扁桃体、アンヘドニアのみを示すタイプでは内側前頭前野-側坐核の神経ネットワークの障害が示唆される結果となりました。 4つのタイプの中でより症状が重い社会性低下とアンヘドニアの両方の症状を示すタイプについて、変化が明らかになった内側前頭前野-側坐核を活性化したところ、社会性低下とアンヘドニアの2つの症状は消失しました。 さらに、研究グループは、遺伝子発現制御に重要な役割を担うタンパク質「KDM5C」が活性化すると、社会性低下とアンヘドニアの両方の症状を示すタイプに認める行動異常を引き起こすことを突き止めました。 KDM5C阻害剤を投与すると、社会性低下とアンヘドニアの両方の症状を示すタイプの割合が顕著に減少しました。