ファッションの“情熱”を振り返る展覧会
「ありのままでいたい」というのも願望の一つ。たとえば、18世紀末にフランス王妃マリー・アントワネットが好んだというシンプルな王妃風シュミーズ・ドレス、あるいは平凡さを肯定的に容認する現代服のなかには、そんな願いが垣間見える。1990年代以降に〈プラダ〉や〈ヘルムート・ラング〉らが牽引したミニマルなデザインの服や、ミニマル・ファッションの究極系とも表現できる、いわゆる“下着ファッション”にフォーカス。同じ空間には、ヴォルフガング・ティルマンスの写真や松川朋奈の絵画がかけられている。 4番目のセクションは「自由になりたい」。小説『オーランドー』(1928年)に触発された「コム・デ・ギャルソン 2020年春夏コレクション」「コム・デ・ギャルソン オム・プリュス 2020年春夏コレクション」、そして、川久保玲が衣装デザインを担当したオペラ作品《Orlando》(2019年)の三部作を一挙に紹介。異なる時代に制作された文学と衣服に通底する、アイデンティティに対する普遍的な問いかけを探るラインナップに。
最後の「我を忘れたい」というセクションでは、“まとう”という一瞬のときめきや楽しさを伝えてくれるゴージャスな装いが集められた。〈トモ・コイズミ〉によるフリルやリボンを用いたドレスや、大胆な唇が印象的な〈ロエベ〉のドレスは眺めているだけでロマンチック。その一方で、ファッションへの尽きない“目移り”も取り上げ、際限のない欲望の姿を仮託しているかのようなAKI IMONATA の彫刻も同居させている。 衣服を着る人、創作する人、それぞれの立場から注がれる情熱。そして、時代を物語る願望や葛藤が映し出される作品群は、目の前にしてはじめて感じる“LOVE”があるかもしれない。 【LOVE ファッション─私を着がえるとき】 日程_2024年9月13日(金)~11月24日(日) 開館時間_10:00~18:00(金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで 会場 _京都国立近代美術館(岡崎公園内) 住所_京都市左京区岡崎円勝寺町 休館日_月曜日 *ただし9月16日(月・祝)、9月23日(月・休)、10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)は開館。翌日火曜日は休館。 観覧料_一般:1,700円(1,500円)、大学生:1,100円(900円)、高校生:600円(400円) *熊本市現代美術館、東京オペラシティ アートギャラリーに巡回予定。 Text_Nico Araki
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