共産党の「しんぶん赤旗」が電子版発行、それでも紙にこだわる理由
日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が、7月2日から日刊紙の電子版発行を始めた。月額購読料は紙版と同じ3497円(税込)、記事は紙面と同じイメージで閲覧できる。商業的な生き残りを賭ける日本経済新聞や朝日新聞も有料の電子版新聞を提供するが、政党機関紙としての赤旗電子版の狙いは何なのか。
きっかけは安全保障関連法案
機関紙の部数は、党勢を測る一番のバロメータだ。「部数が減れば党活動に影響がおよぶ」としんぶん赤旗編集局長の小木曽陽司(こぎそようじ)氏(64)。日刊紙と日曜版を含めたしんぶん赤旗の購読者数は、1997年に約230万だったものが、2017年には約113万人と、20年で半減した。 しかし、電子版の発行を開始した7月、日刊紙の紙版と電子版の購読者数を合わせて2012人増えたという。1か月に購読者が2000人以上増えるケースはめったにない。小木曽氏は「電子版は、新たな層の購読者獲得に一定程度成功している」と評価。「結構大きいんですよ、これは」と強調する。 電子版発行の契機となったのは2015年、安全保障関連法案に対して起こった反対運動だった。小木曽氏は「市民と野党との共闘の流れができるなか、学生や大学の研究者など新たな層から、赤旗をネットでも読みたい、という要望が出た。彼らに気軽に読んでもらう役割を電子版が果たせるのではないか、ということで、日刊紙の電子版発行を決めた」と振り返る。 電子版を新たな層のしんぶん赤旗への入口として位置づけており、ゆくゆくは紙版の読者増とともに党勢の拡大につなげたいという。
機関紙のメインは電子版ではなく、「紙」
順調な出足となったが、今後も機関紙のメインは電子版ではなく、紙だという。毎朝、党員が読者の家に機関紙を配り、集金も行うなかで、読者とふれあい、関係を次第に強めていく。党員・読者の要望を吸い上げるリアルなネットワークなのだ。 1922年の党創設以来、そうした活動を積み上げて、党の影響力を広げ、財政基盤も確立してきた。小木曽氏は「この活動は紙でないと成り立たず、宅配の必要のない電子版が取って代わることはできない」と話した。 小木曽氏は「電子版によって、『しんぶん赤旗』が新しい層に広がったことは大きい」と笑う。今後は、日曜版の電子版発行も検討する。
【メモ】
政党機関紙では他にも、公明党が2018年1月から「公明新聞」の電子版を発行している。赤旗と同じくパソコンやスマホ上で紙面と同じイメージで閲覧できる。インターネット経由で記事をテキストで読めるサービスとしては、自由民主党の「自由民主」が2000年から、新規購読者の開拓を目的に提供を開始している。 (取材・文:具志堅浩二)