【本城雅人コラム】期待のクロワデュノールを新馬戦から北村友一に…大けがから復活への努力を見てきた斉藤崇師との間に心温まる物語を見た
◇中央競馬コラム「ぱかぱか日和」 ◇28日 「第41回ホープフルS」(G1・中山・芝2000メートル) ◆北村友一騎手、プレゼンターの堀田真由と握手【写真】 時計も優秀だし、内容も圧巻だった。来年のクラシックが見えたようなクロワデュノールの勝利だった。 北村友一騎手は最高の騎乗だったと思う。向正面でファウストラーゼンの杉原騎手がまくっていきハナに立つ。3着に粘ったのだから好判断だった。その時、北村友一騎手もしっかり馬を動かし、7番手から4番手までポジションを上げているのだ。数秒待っていたら、もう少し接戦になるか、もしかしたら結果は違っていたかもしれない。
北村友一騎手にとっては、2020年の有馬記念をクロノジェネシスで勝利して以来のG1制覇。同馬とのコンビでは秋華賞、宝塚記念も勝っているが、翌21年のドバイシーマクラシック(2着)を最後に、鞍上は外国人騎手となり、宝塚記念を連覇した時には背中にはいなかった。決して降ろされたわけではなく、北村友一騎手が21年5月に落馬し、背骨を8本以上も折る大けがをし、復帰まで1年以上かかったからだ。 1年休めばいくらG1騎手でも感覚を戻すのに時間はかかる。復帰後2年ほどは乗り鞍もセーブしていたように思う。しかもその間、クロノジェネシスを管理する斉藤崇史厩舎では、所属する団野大成騎手がG1ジョッキーに大成長した。こればかりは北村友一騎手に聞いてみないと分からないが、今後斉藤崇厩舎の有力馬には声がかからない、そんな思いも少しはよぎったのではないか。 だが北村友一騎手は今年、クロワデュノールの東京スポーツ杯2歳Sを含めてこの日までに6つ重賞を勝ち、完全復活を遂げた。その努力を見て、厩舎の期待馬に新馬戦から声をかけた斉藤崇調教師も心憎い。 クリスマス前に短期免許の外国人騎手は帰国したが、彼らがいてもクロワデュノールのコンビは揺るがなかった。調教師が騎手を成長させ、騎手は調教師の期待に応える。競馬というのはやはり人と人とのつながりで成り立っているのだ。今年も最後に、心温まる物語を見せてもらった。(作家)
中日スポーツ