大韓航空とアシアナ航空、統合後の人為的料金引き上げはない=韓国
大韓航空がアシアナ航空を子会社化し、両社統合後に航空運賃が引き上げられないかに関心が集まっている。市場で競争する航空会社が1社減り大韓航空のシェアがさらに高まるために提起される懸念だ。 だが航空業界専門家らは統合後に運賃が引き上げられるかもしれないという心配は杞憂にすぎないと一蹴する。世界の航空市場が完全競争市場に近いため、事実上一方的な運賃引き上げは難しいということだ。これに加え航空券の運賃体系は一般消費財の価格体系とは完全に違うため運賃引き上げの懸念は現実性が少ないと指摘される。 ◇在庫処理できず需要と供給が運賃を左右 航空券は一般消費財とは違って販売できない座席の在庫処理ができない。航空機が出発すればもう販売できないためだ。したがって限定された時間で座席を販売しなければならないため競争事業者の有無よりは供給と需要が航空運賃を左右する最大の要素だ。すなわち、供給が需要より多い場合、販売運賃は下落するほかない構造という意味だ。 大韓航空とアシアナ航空は重複路線の運航時間帯を分散させ乗り換え接続便を増やすなど既存の供給を最大限維持する基調だ。したがって運賃が引き上げられるかも知れないという主張は、供給が維持されるという仮定の下で説得力を失う。 その上外資系航空会社が韓国市場でのシェアを拡大し、市場での競争も簡単ではない。中東の航空会社の場合、積極的な価格政策を基に韓国系航空会社の海外直行便需要を奪っている。こうした環境の下で運賃の一方的な引き上げは事実上不可能だ。 公示運賃が上がるだろうという主張も根拠がない。航空運賃の上限線の公示運賃は各国の航空協定により政府認可を受けたり申請受理が必須だ。韓国国土交通部は認可制・申告制国の公示運賃に対し厳格に審査をしている。したがって国土交通部の承認なく航空会社が恣意的に公示運賃を上げることはできない。 公示運賃を引き上げるのも至難だ。認可制国の場合、2006年以降に公示運賃が引き上げられたことはなく、申告制国の場合、2010年以降公示運賃引き上げが受理されたことがないほどだ。 ◇大韓航空と政府とも「人為的値上げはない」 大韓航空はアシアナ航空買収を決めた直後から持続的に人為的値上げはないと強調し続けてきた。 韓進(ハンジン)グループの趙源泰(チョ・ウォンテ)会長は2020年11月に開かれた韓米財界会議直後に内外メディアと会った席で「顧客の便宜低下や料金上昇はないだろう」と断言した。大韓航空の禹基洪(ウ・ギホン)社長も同年11月に開かれた大韓商工会議所観光産業委員会会議が終わった後、「仁川(インチョン)空港の国際線発着枠基準で両社のシェアは40%水準にすぎず、地方空港に行けばそれよりむしろ少ない。外資系と格安航空会社など残りの60%とも競争をしなければならず、懸念する航空券料金値上げやサービス低下はないだろう」と線を引いた。 航空産業を総括する国土交通部でも「外資系・LCCと競争を行うだけに急激な航空運賃引き上げはないだろう。消費者便益水準が低下しないよう積極的に管理する」と繰り返し強調した。 韓国公正取引委員会は2022年に両社の企業結合承認決定を下しながら大韓航空の競争制限の恐れがある路線では合併完了時点から10年間、2019年の平均運賃より物価上昇率以上に引き上げることを禁止した。ただ他の航空会社がその路線に新規参入し競争制限性が解消されれば10年以内でも規制は解除される。 3月に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領主催で開かれた民生討論会でも「両社統合時に料金をはじめとするサービス品質が寡占により落ち込まないように政府が徹底的に管理する」という言及もあった。 航空業界関係者は「消費者便益の側面で航空運賃は重要な要素に違いない。だが事実上運賃引き上げの可能性もない論理に足を引っ張られて韓国の航空産業再編の障害になってはならない」と強調した。