川村壱馬、RIKU、吉野北人がデート・セラピストを演じる『MY (K)NIGHT』“甘いシーン”がないのに胸をうつ理由
2023年12月1日(金)から公開されている映画『MY (K)NIGHT マイ・ナイト』は、THE RAMPAGEのボーカリストとして活躍する川村壱馬、RIKU、吉野北人の三人が、一夜限りの恋人=デート・セラピストを演じ、悩める女性たちを救うという物語だ。 【画像】デート・セラピストを演じる川村壱馬、RIKU、吉野北人 人気の俳優が女性と一晩を共に過ごし、癒すという内容を聞くと、女性の夢物語を映像化したのかと思う人は多いだろう。女性の夢の物語を丁寧に描くことは、むしろ観客に望まれていることである。しかし、中には女性の夢物語を語りながら、表層的な女性の願望しか拾えていないものもある。この作品も、単にそのような作品になるのではないかと思った人もいるのではないだろうか。 私もそのひとりであった。しかし、この映画は、そんな大量生産型のラブ・ストーリーとは一線を画している(もちろん、そんな定型的なラブ・ストーリーにも真摯に作られたものがあるのは知っているが)。 川村壱馬、RIKU、吉野北人が演じる刹那、イチヤ、刻(とき)という三人のデート・セラピストが出会うのは、それぞれ、心に傷を抱えた女性たちだ(ただ、それだけではまだありきたりである)。 刻がエスコートするのは、満たされない心を埋めようとする主婦の沙都子(安達祐実)。彼女は夫に浮気されていて、一回りも若い女性とつきあう夫の気持ちを知りたいとやってきたのだった。彼女は刻から「さとこ」と呼び捨てにしようか? と提案されると、「呼び捨ては嫌かも……。いつもそうやって呼ばれてるから」と答えるのだが、このセリフから、普段、夫に呼び捨てされることで支配されていると感じているのかな……とピンとくる。
一夜限りのデートでやってみたかったこと
そんな彼女が一夜限りのデートでやってみたかったのは、「都会で暮らす、イケメンだけど孤独で自由な男の子になる」ことで、刻の日常を見てみたいという。沙都子は刻と一緒に「にんにくマシマシ全部入りのラーメン」を食べたり、煙草を吸ったりし、やがて刻の家に向かう。沙都子は、妻という役割に閉じ込められていて、だからこそ自由な男の子になりたいと考えたのだろうなと思わせるものがある。 刻の日常がにぎやかでいい。刻は外国語がとびかうボロアパートの一室に住んでいて、恋人と一緒に、となりの子供を預かったりしながら暮らしている。ここで沙都子は、あることをきっかけに、自分にも物事に立ち向かうパワーがあるのだと確信して、一夜限りのデートから彼女自身の日常へ戻っていくのだった。 一方、イチヤはインスタグラマーのmiyupo(夏子)と人気の料理店を巡るが、彼女は料理の写真を撮るばかりで食事に手を付けず、イチヤは食べる係をさせられていた。miyupoの行動を見ていると、最初は空虚に感じるが、次第に彼女には芯の通った強さがあることに気づく。このパートでは、イチヤのほうが何か消せない悩みを抱えているのがわかる。イチヤはかつては写真を勉強していたが、志半ばであきらめ、昔の仲間との連絡を絶っていたのだった。 三人のセラピストの中では、イチヤが最も自分に自信のないキャラクターなのかもしれない。miyupoとのデート中に、偶然昔の写真仲間が開いていた写真展のオープニングパーティにもぐりこむことになって、さらに自信をなくしそうになっていたが、miyupoに逆に救われるようなところがあった。