NHK『虎に翼』登場の25歳俳優の“出身地ならではの繊細さ”。色っぽい横顔にも注目
取材現場でのエピソードトーク
本田響矢という人は、おそらく現在の若手俳優の中でもっとも繊細な演技を得意とするひとりだろう。単に技術的なことではなくて、何か本能的に、素肌で繊細さを表現できてしまう感じ。 ドラマ初主演作となった『ジャックフロスト』(MBS、2023年)で、筆者はオフィシャルライターを担当したのだが、その取材現場でのエピソードトークや空気感をよく覚えている。同作は、イングランドの霜の妖精ジャックフロストをモティーフにしたBLドラマ作品。 雪の情景と本田が妙にマッチしているなと感じ、「雪国の出身ですか?」と筆者が聞くと、「福井県の出身です。まさに雪国です」(2023年4月26日BANGER!!!掲載インタビュー)と答える。雪国育ちの人はどこか抒情的で、だからこそ、凍てついた雰囲気の画面上で、繊細に研ぎ澄まされるのではないか。 本田自身、雪のような肌の白さで、凛々しさを洗い上げている。ほんとは彼が雪の妖精なんじゃないかと思ってしまうくらい。そんな出身地エピソードを語ってくれる間もまた繊細な冬景色が目の前に広がるような気がした。
繊細さが大胆さへと踏み込んだ瞬間
取材では、「脚本に書かれていない背景を、クランクインの前にまとめていました」とも話していた。雪国出身というバックグラウンドを持った上で、本田が役作りで実践しているのは、履歴書作りなのだった。 履歴書作りとは、演じる役柄について脚本上には書かれていない事実も補足しながら、その人物の経歴を書き起こす作業のこと。すべての俳優が実践しているわけではないが、役柄を理解する一助になる。 『ジャックフロスト』では、履歴書作りの過程で役柄と丁寧に向き合った結果として、本田の繊細な息づかいがキャラクターから伝わってくるのだと考えられる。『虎に翼』の大庭光三郎役でも同様なアプローチをしているのかもしれない。 ただし、光三郎役ではもう少しアクセントがきいている。第64回、帰宅中の寅子が、路地の陰で光三郎とすみれが熱い抱擁を交わしているのを目撃する。光三郎の色っぽい横顔からは、本田の繊細さが大胆さへと踏み込んだ瞬間をキャッチすることができたからだ。 <文/加賀谷健> 【加賀谷健】 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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