『フリースタイル日本統一』#10ーー1回戦の全バトルが終了 Zeebraが番組に求めることは?
2023年10月より放送中の『フリースタイル日本統一』(テレビ朝日/ABEMA)。同番組では、全国16地区で活躍するラッパーが3名1組となって、それぞれの地元の威信を賭けてフリースタイルバトルに挑戦。勝利チームは敗退チームから好きなラッパー1名を吸収し、最終的に日本統一を果たすと、その暁として賞金100万円が贈られる。 【写真】『フリースタイル日本統一』#10のハイライト 今回は、12月5日に公開された【#10】のハイライトを振り返っていく。細かなネタバレもあるためご注意いただきたい。 ・歩歩、TERUとの大将戦でも“歩歩節”を発揮 前回の【#9】より引き続き、1回戦(壱万石の戦い)にて、TEAM大阪(ミメイ×POWER WAVE×歩歩)とTEAM京都(REDWING×Fuma no KTR×TERU)が対戦中。バトルもいよいよ佳境を迎え、残すは歩歩とTERUによる大将戦のみとなった。この後、バトルの結果を端的に示した後、内容の振り返りをするのだが、まずは両者のバースを抜粋したものをご覧いただきたい。 歩歩:街から街 Coast to coast 何を残ず お前もっと個性を残せ お前ちょっと上手いからのぼせあがってる 俺が勝ってる ガッテム 分かってる俺はブチ上げる コイツ言ってる事 口だけ それじゃ無理やで 俺はフリースタイルでお前ら全員まとめてプチ上げる TERU:ブチ上げる デカい花火を打ち上げる ピューパンつって お前の首元刈ってくるだけだぜ 歩歩:ブーメラン シュ スバーン 切れてもOK 俺はHIP HOPゾンピご存じ 俺 装備なしMicrophone I'm sorry ごめんなさい お前勝つの5年は無い 俺しかいない 京都を背負ってる しょっぺえ事は言えねえ しょんべん 負けん気 俺は間違いない TERU:俺のテンションだって最高潮 俺だって背負ってる 天下の台所 あくまで抜粋ではあるものの、先攻の歩歩が完璧なアンサーを返していることがわかるのではないだろうか。ジャッジも文句なし、5-0での圧勝である。歩歩も勝利に確信を持ってか、判定前にはガッツポーズを構える場面も。TEAM京都のREDWINGに、チームメイトのミメイとPOWER WAVEが2枚抜きをされた後、背水の陣をひっくり返す見事な逆転劇を繰り広げてくれた。 ・歩歩がもし負けるとしたら? アンサーしながら“明後日の方向”に向かうバトルスタイル そんな歩歩のラップについては【#9】で破られたFuma no KTRも「強すぎますね~」と苦笑まじりに語っていたところ。これまでバトルで当たりたくない相手として、TEAM北関東のDOTAMAの名前を挙げていたが、この日を境に歩歩に変わったというほどだ。その理由も、TERUとのバトルで視聴者にさらに色濃く伝わったはずである。 というのも、Fuma no KTRもTERUも思い通りのラップをさせてもらえないという、非常に類似した負け方をしていたから。今回であれば〈デカい花火を打ち上げる ピューパンつって〉と、擬音語を用いたラインから、歩歩も文脈を読みとりすかさず〈ブーメラン〉だと反応。しっかりとアンサーを返しているのだが、それ以上にスタミナ無尽蔵で、本当に好き勝手にラップを展開してくる。 野球でたとえるならば、野手が打球を見失うことがたびたびあるが、あの感覚に近い。しかも気づいた頃には、ボールはバックスクリーンに直撃で、言葉も出ない。歩歩のラップも同様で、たった8小節のはずなのに、“なんでそんなところに?”とツッコミを入れたくなるほど、バースを重ねるたびに、対戦相手にとって明後日の方向に話と熱量を持って行かれてしまうのだ。これには、さすがのFuma no KTRやTERUでも自身のよさを発揮するのが難しく、とてもやりづらそうな表情を浮かべていたのが印象的である。今回のバトルビートとなったUZK「Gentleman」との相性もあるが、フロウの観点でもなかなか思い通りにならず、最終バースでも言葉が詰まる場面すら見られた。 『フリースタイル日本統一』に限らず、これまでの歩歩を見ていても、彼が負けるのは自らのラップや言葉選びについて、“たしかに言われた通りかも”となにかに気づき、反省をした瞬間があったときが多い気がする。逆に言えば、自身のラップを俯瞰さえしなければ、無敵。このままトップオブザヘッドで、次回以降のバトルも勢いよく乗り切ってしまうのか。そして、まだ隠し持っている(が、すでに広く知られている)お決まりの“あのフレーズ”や“このフレーズ”なども、いつ出してくるのかが楽しみで仕方ない。 ・1回戦のバトルがすべて終了 Zeebraが予想する決勝戦の見どころとは? TEAM大阪とTEAM京都を終えて、まずは1回戦のバトルがすべて終了。2回戦に進む8チームが出揃う形となった。オンエア後半では、オーガナイザーのZeebraが、2回戦進出チームを紹介しながら、1回戦の模様を振り返った。 数あるチームを眺めても、改めて感じたところだが、優勝候補であるTEAM埼玉とTEAM神奈川が2回戦で早くも対決を迎えてしまうことが、この上なく惜しい限り。1回戦を終えて、TEAM埼玉は晋平太、TEAM神奈川は輪入道を新たなメンバーとしてそれぞれ迎え入れている。本当に“誰が勝てるの?”と思えてくる強靭すぎるラインナップだが、2回戦を終える頃には、このどちらかが敗退をしているとは……。 そんな悲しみを早々に予感しつつも、Zeebraは最後、勝利チームに強力なラッパーが増えていき、決勝戦では6名ずつの大所帯なバトルになることで、番組がさらに盛り上がることに心を弾ませていた。番組タイトル通り、まさしく国取り合戦。IO(KANDYTOWN)が11月末に発表したばかりの新曲「Sequence」より〈俺のZoneが増していく さらに〉なんてラインを思い浮かべながら、今週はこのあたりで筆を置きたい。
一条皓太