米最高裁、緊急時の中絶手術を容認 西部アイダホ州の禁止法巡り
米連邦最高裁は27日、西部アイダホ州の法律が原則的に人工妊娠中絶を禁止していることを巡る訴訟で、緊急時の中絶手術を認めるべきだとの判断を示した。女性が選択する権利を擁護するバイデン政権は、同州の法律が患者に緊急医療の提供を義務づけた連邦法に違反するとして、差し止めを求めて提訴していた。 【写真特集】米国の偽の中絶クリニックとは アイダホ州の法律は2022年、最高裁が中絶を憲法上の権利と認めた「ロー対ウェイド」判決(1973年)を覆し、州による中絶禁止を認めたことを受けて発効した。妊婦の生命に危険がある場合などを除いて中絶を禁止し、中絶を実施した医療関係者も禁錮刑になる可能性がある。 これに対し、86年に制定された連邦法「緊急医療措置および労働法(EMTALA)」は、連邦政府の補助金を受ける医療機関は医師が緊急性があると判断した患者に対して、容体を安定させる措置を施すことを定めている。 最高裁はこの日、判事9人のうち保守派3人を含む計6人の多数意見で、妊婦の生死に関わる場合以外でも医師が緊急性があると判断すれば手術を認めるべきだとした。ただ連邦法と州法のどちらが優先されるかについては踏み込まず、下級審が審理する。 バイデン氏は判断後の声明で「いかなる女性も、治療を拒否されたり、死にひんするまで待たされたり、医療を受けるためだけに故郷の州から逃げ出すことを強いられたりしてはならない」と強調した。 一方、ブルームバーグ通信によると、判断が示される前日の26日、最高裁は誤ってホームページに判決文とみられる文書を一時的に掲載した。最高裁の担当者は同通信に「不注意で文書をアップロードしてしまった」と説明した。 トランプ前大統領は在任中、死去したリベラル派の判事の後任に保守派の判事を指名。最高裁の保守化が進み、「ロー対ウェイド」判決が覆ることにつながった。こうした経緯から、バイデン氏は11月の大統領選に向けて、中絶擁護の姿勢を前面に打ち出し、有権者へのアピール材料としたい考えだ。【ワシントン松井聡】