将棋(11月16日)
あす17日は「将棋の日」。江戸時代、将棋好きだった徳川家康の前で対局が繰り広げられた故事にちなむ。将棋は先々の手を読む想像力や論理性を高めるとされる。かの人の腕前はいかほどだったか▼家康は豊臣秀吉に屈し、未開の関東に転封された。今で言う左遷されたままでは終わらない。敵を味方に付け、関ケ原の戦いを勝ち抜く。策を弄[ろう]して難攻不落の大阪城を落とし、徳川260年の礎を築いた。駒を手に磨いた知略も、天下取りに役に立ったに違いない▼福島市の交流施設「アオウゼ」の和室に駒音が響く。子どもの視線は集中力の固まりのようだ。日本将棋連盟ふくしま支部の会員80人のうち4割近くを小中学生が占める。藤井聡太竜王の活躍に魅せられてか、入会が相次いでいるという。思考力の優れた「福島っ子」が育ってくれれば言うことなし▼あすは「家族の日」でもある。だんらんの日曜日とも重なる。将棋盤が眠ったままなら、また始めてみては。暮らしの苦境の封じ手もひらめくならば重ねて言うことなしだ。たとえ考慮時間はたっぷりかかっても。天下人の本歌を取れば、国はただし、物価高の重荷を負うて急ぐべからず、とはいかない。<2024・11・16>