大阪・関西万博の「Better Co-Being」パビリオンのユニフォームがお披露目 YUIMA NAKAZATOとゴールドウインが共同開発
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会と株式会社ゴールドウインは2024年12月12日、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシグネチャーパビリオン「Better Co-Being(R)」の共同開発ユニフォーム発表会を開催。YUIMA NAKAZATOを手掛けるファッションデザイナー・中里唯馬さんとゴールドウインが企画開発・製作したアテンダントスタッフユニフォームをお披露目した。 シグネチャーパビリオン「Better Co-Being(いのちを響き合わせる)」アテンダントスタッフユニフォーム ■“屋根や壁のないパビリオン”に合わせたユニフォームを開発 「シグネチャーパビリオン」は、大阪・関西万博会場の中心に位置し、8人のプロデューサーがそれぞれ展開するテーマ事業パビリオン。「Better Co-Being(R)」は、慶應義塾大学医学部教授を務めるデータサイエンティストの宮田裕章さんが「いのちを響き合わせる」をテーマに、“来場者同士がつながり、響き合う中で共に未来を描く、共鳴体験の提供を目指し”たパビリオンで、会場は屋根も壁もなく、万博会場中央にある静けさの森と連動したものとなる。 発表会にはプロデューサーの宮田裕章さん、ユニフォームデザインを担当した中里唯馬さん、ゴールドウイン常務執行役員の新井元さんが登壇。 宮田さんは「これまでの万博では中心にエッフェル塔や太陽の塔のように人工物だけを置いていた。今回はその人工物だけではなく、生態系を招こう」と、森とともにたたずむパビリオンになったことを話し、そうしたコンセプトの背景を「今まではいわゆるアニマルスピリッツ、弱肉強食・適者生存・競争が経済だという考え方だったんですが、これからはそうじゃないと。世界とのつながり、未来とのつながりの中で、ともにこの未来を考え作っていく。生態系のこのつながりの中で未来を感じていこう」と説明した。 一方、雨風や気温をコントロールする建造物がないパビリオンであるため、「4月から10月(の期間)、一歩油断すれば熱中症になってしまうような環境の中に立ち続ける人々を支えるという、衣服のプリミティブな世界とのつながりの中で人をどう守るか」という難しい課題に取り組むユニフォームになったとも話す。 ■「生命を輝かせるような光」を表現したデザイン 形あるものが絶えず移ろい続ける有り様を意味する「IMPERMANENCE」というタイトルで表されるユニフォーム。デザインは、ディティールやパターンの随所に、着物や障子などからヒントを得た東洋のアイデンティティを込めたそう。また、適度なフォーマルさとともに、野外環境で長時間快適に過ごせる機能性を両立したものだという。 中里さんは建設途中の万博会場へ足を運び、現地の「少し立っているだけでクラクラしてくるような暑さ」を実際に体感したと話す。その上で、宮田さんと対話を重ねる中ででてきた「光」というキーワードに着目。「このパビリオンでは、まさに太陽の光が降り注いで、それを植物を通じて光を受けていく。光というものが非常に重要なパビリオンです。環境や時間によって常に変化していく太陽の光を今回のインスピレーションにしていこう」と、ユニフォームデザインの着想について語る。 中里さんは「夏に太陽が降り注いで緑の葉に当たった時に、葉の隙間から木漏れ日が差し込んでくるような光り方。この生命を輝かせるような光というものを表現していきたい」という思いから、木漏れ日の写真と中里さんが描いたドローイングをグラフィックを作り、それをゴールドウインとともにAIを用いたランダム拡張したプリントを制作したと話す。 また、セイコーエプソン株式会社のデジタル捺染機「Monnna Lisa」と顔料インクを使用し、アナログ染料プリントと比較して環境負荷を抑えた最先端のプリント技術が用いられた布は、裁断する箇所によってすべてのアイテムの柄が一点ずつ異なるように設計されている。ここにも「一人一人の個の輝きを尊重するような方向性をグラフィックで表現できないか」という考えがこめられているという。 ■新遮熱素材や和装をヒントにした機能性も随所に さらに、ユニフォームの機能面ではスポーツウェア・スポーツ用品大手のゴールドウインが培った技術が随所に活用されている。ゴールドウインの新井さんは「お話しいただいたコンセプトを守りながら、先ほどの環境の中でいかに安全で快適にお仕事をしていただけるかが大事な使命」だったと話す。 同社の研究開発施設「ゴールドウイン・テック・ラボ」では、素材メーカーとともに、太陽光反射率に着目した新たな生地を開発。紫外線遮蔽率・太陽光の反射率をともに高めた新遮熱素材は、ユニフォームのジャケット、シャツ、パンツの生地に採用されているという。 また、東洋のインスピレーションはデザインのみならず機能面にも活かされているという新井さん。「たとえば前立てのところは、右左どちらが前でも着られるような特殊な構造。そして暑さ対策ということで、ふすまとか障子のように空間を稼働しながら風がダイナミックに体の中を抜けていく」と、袖下から脇がファスナーで大きく開閉する構造を採用したと話す。ファスナーの開閉具合や、着物の帯からヒントを得たウエストベルトの調節で、体型や好みに合わせてシルエットや丈を変化できるようにもなっている。 完成したユニフォームについて宮田さんは、「たくさん作らなきゃいけないけれども個性を尊重する、現代社会・経済のなかでは難しいことに挑戦していただいて本当に素晴らしかった」と感想を明かした。そして「(このユニフォームが)まさに万博のテーマにもつながる、人と世界、人と未来をつなぐ新しい提案になっていくといいなと。ユニフォームをまとう方々とこの体験を広げていければ、次のファッションであり、未来の在り方につながるかなと思いました」とユニフォームの持つ可能性に期待を込めた。