日大アメフット部の次期監督選考の見通し立たず?!
「日大の次期監督として、すでに何人かの候補がOBの中では挙がっていますが、大学の内規でアメフット部の監督は日大の職員でなければ就任できないというものがあり、日大外部のOBの招聘が難しいという問題にぶつかっています。内田前監督も常務理事であり職員ですし、処分を受けて辞任した森ヘッドもスポーツ科学部の専任講師という立場で職員でした。職員の中から次期監督を選ぶとなると候補が限られてきますし、人選にあたって大学側の影響力を大きく受けることになります。大学の外にいるOBに頼もうとした場合は、この内規を盾に大学側が阻止できるのです。日大のOBには、次期監督にふさわしい優秀な適材はたくさんいますが、まずこの内規をとっぱらわないと、ちゃんとした人が次期監督になれないんですよ」 ここに日大の組織的な問題が見え隠れしている。 「井上コーチは、内田監督の顔色を窺って本当のことを言っていない」と、関学大側が指摘していたが、井上前コーチも日大の職員であり、人事権を持つ内田前監督の機嫌を損ねると、その職を失い生活に困るという目に見えない圧力があった。日大のトップクラスのコーチには、職員として1000万円ほどの年収が保証されるというから、なおさらだろう。 チームによればボランティアコーチや、OB会などが、お金を集めて、コーチへの手当てを補助しているところもあり、京大アメフット部を日本一に育てた水野彌一監督などは、その昔、自ら学習塾を経営して生計を立てながら生徒を指導してきた。日大のように監督と大量のコーチを職員として雇い入れてサポートできるチームは限られている。 確かにチームの運営としては、監督、コーチを大学が職員として経済的に身分保証をしてあげることは理想的だ。学生は、4年のスパンで入れ替わるが、事実上の“プロ監督”がいれば、ノウハウの蓄積や継続的なコーチングを確立することができる。だが、その一方で、今回の日大のように職員の立場を“人質”にとられて監督に盲目的に従うようなコーチが生まれるというマイナス面もある。長年チームの体質を変えることができないという問題を生む土壌にもなる。 もし次期監督を日大の職員の中から選ばねばならないのならば、人選は限定され、チーム改革に最適な監督を選ぶことは難しくなる。日大の外部にいる優秀なOBに声をかけて、監督にするためには、今のままの内規では、まず日大の職員にする必要があり、その段階で大学側、すなわち、今なお表に出てこない田中理事長が気に入らない人物が推薦された場合、横槍が入って潰されるという可能性も否定できない。 誰がどう選ぶのか?という次期監督選定のプロセスは、ガラス張りにする必要があるし、そもそも、その内規から大幅に改革しなければならないだろう。 現在、立ち上がっている第三者委員会に、その方向性を委ねるつもりならば、その答申の回答予定が、7月下旬とされているため、次期監督選定は8月初旬にずれこむことになる。そうなると9月の開幕までの出場停止処分の解除は、ほぼ絶望的となるだけに第三者委員会のスケジュールを見直す必要がある。 とうてい日大に自浄作用は期待ができないのだから、理想を言えば、第三者委員会の答申スケジュールを1か月早め、そこに再発防止策と同時に次期監督を含めた指導体制決定のプロセスのガイドラインまでを決めてもらい、その結論に従って民主的に人事を進めることが最善なのだが……。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)