ヤマハYZF-R7はバイク版のユーノス ロードスター(初代)だ!!「自分の腕だけで勝負したいアナタに」
電子制御が無ければ、スーパースポーツじゃないのか?
少し前にモーサイweb/モーターサイクリスト誌に掲載したヤマハ YZF-R7の試乗記で、ツルシでサーキットを走れるという意味でも「戦う準備が整っている」と書いたら、友人から「クイックシフターとトラクションコントロールを装備していないんだから、今どきのスーパースポーツの基準で考えると、YZF-R7は戦う準備が整っていないんじゃない?」というツッコミが入った。 【画像10点】ヤマハYZF-R7を写真で解説「ライバルモデル、ホンダCBR600RR、アプリリアRS660などと比較も」 その言葉を聞いた僕は「確かにそうかも」と感じ、戦うではなく、スポーツライディングを楽しむ準備にするべきだったか……と思ったのだが、友人の意見に同意したわけではない。というより、昭和生まれのオッサンとしては、クイックシフターやトラコンなど、電子デバイスがマストになってきた昨今のスーパースポーツ/スポーツバイクに、漠然とした疑問を感じなくもないのだ。 いずれにしても僕の中には、電子デバイスが無くてもスポーツライディングが十二分に楽しめる、YZF-R7の魅力を多くの人に伝えたい気持ちがある。そこで当記事ではYZF-R7を軸にして、スポーツライディングを楽しむ準備と電子デバイスに対する個人的な見解を記してみたい。 ■ヤマハYZF-R7(105万4900円) 688cc並列2気筒エンジンを搭載するネイキッド・MT-07の派生機種ではあるものの、YZF-R7は多くの部品を新規開発。前後サスはサーキットを意識した構成で、インナーチューブ径41mmの倒立フォークはフルアジャスタブル、リヤショックはプリロードと伸び側減衰力の調整が可能。スチール製ダイヤモンドフレームは、スイングアームピボット上部のパーツを樹脂製カバー→アルミ製センターブレースに変更することで、ねじれ剛性を20%高めている。
ライバル勢とは一線を画するYZF-R7の装備
まずは部分的な話から始めると、僕がYZF-R7で「スポーツライディングを楽しむ準備」が整っていると感じたのは、スーパースポーツ然とした構成のセパレートハンドルとシート、飛ばしたときの踏み応えを意識して後方/上方に設置されたステップ、快適性より運動性を重視した前後サスペンション、コントロール性へのこだわりを感じるブレンボのラジアルマウント式フロントブレーキマスターシリンダーなどである。 あら、文字にすると何だか取るに足らない要素みたいだが、現実の市場でライバルになりそうな同価格帯=110万円前後のフルカウルミドルスポーツ、ホンダ CBR650Rやスズキ GSX-8R、カワサキ ニンジャ650、トライアンフ デイトナ660などで、サーキットやワインディングロードをムキになって走ると、そのあたりに物足りなさを感じることが少なくないのだ(ただしいずれのモデルも、街乗りやツーリングはYZF-R7より快適)。 そしてそういったライバル勢のライディングポジション関連部品や前後サス、フロントブレーキマスターシリンダーを、アフターマーケットパーツを用いてYZF-R7と同等の仕様に変更するとなったら、控えめに見積もっても20万円前後はかかるだろう。しかも安易なパーツ変更は、本来のバランスを崩す可能性がある。だからこそ僕はYZF-R7に「準備が整っている」という印象を抱いたのだ。 ただし世の中にはYZF-R7に対して、スーパースポーツにしてはフレームのヘッドパイプが高い、リヤサスペンションの設定がいまひとつ……などと異論を述べる人もいる。その意見はわからなくもないけれど、前述したライバル勢を同条件で走らせたらもっと多くの異論が出て来ると思う。