ゲーセンが減っても大人気! 「ゲーセンミカド」店長が語るゲームセンターの魅力と生存戦略
◆ゲーマー以外にも意外なお客さんが ――客層はやはり往年のゲーマーが多いのでしょうか? 池田 もちろんそうなんですが、新しい客層もいます。ひとつは、動画配信のおかげで増えた10代・20代の若いお客さんですね。 もうひとつは、結婚したゲーマーが連れて来てくれるお子さんのお客さんです。僕自身も親にゲーセンへ連れて行ってもらったからこそ今があるので、子連れでミカドに来て『ストII』とか『グラディウス』をやってる光景を見るのはたまらないですね。 ――ちなみに、インバウンドの影響による外国人の来客数はどうですか? 池田 大手のゲーセンだとクレーンゲーム目当てで中国人のお客さんが多いようですが、ミカドは北米やヨーロッパからのお客さんが多く来られます。特に北米ではアーケードゲームの文化が90年代に一度滅びてしまっているので、貴重な実機が残っている日本に子供の頃の思い出を求めて足を運ぶゲームファンが多いみたいです。 ヨーロッパのゲームファンは日本のドット絵をアートとしてとらえる方も多いようですね。「ドット絵はとてもクールなのに、今の日本のゲームはどうして何でも3Dにしちゃうんだ」なんて声も聞いたことがあります。 それと、海外でも漫画『ハイスコアガール』(スクウェア・エニックス刊)の人気が高くて、作者の押切蓮介さんがミカドのイメージキャラクター「ミカドちゃん」をデザインしてくれているので、おみやげにミカドちゃんのグッズを買ってくれる方が多いですね。
◆ゲームをやるならアーケードの実機が一番 ――6月30日までの期間限定で、銀座のホテル「ハイアットセントリック銀座東京」とコラボイベントが行われていて、ミカドがレトロゲームの筐体を提供しています。この経緯は? 池田 ミカドでの売上ももちろん大事ではあるのですが、ポップアップストアなどの「外へ広げる展開」も重要であると僕は考えていて。例えば、ミカドのお客さんの中には地方からわざわざ来てくださる方もいるんですが、ということはその地方にミカドの支店の需要があるかもしれないですよね。 ただ、ゲーセンを出店するということは意外と条例や法律などのハードルが高くて、簡単なことではない。その点、ホテル内に筐体を貸し出すコラボというのは制度面での相性も良いので、今後の地方展開への足掛かりになるかもしれないなと感じています。 ――そういった地方展開以外にも、将来的に何か考えているビジョンはありますか? 池田 ひとつは、先ほども話に出た海外のお客さんをよりたくさん呼びたいということですね。例えばミカドの大会を海外のYouTuberに配信してもらったり、実況してもらったりして、もっと多くの海外の方にもミカドを注目してもらえないかなと思っています。 もうひとつは、ミカドのオリジナルゲームを作れないかということ。「ゲーセンのゲーム」としてゲーセン文化を発信しつつ、100円で満足感を得られるレトロゲームの魅力が詰まった、お賽銭感覚のゲームを作りたいですね(笑)。 そういう新しい企画も含めて、これまでのイメージを崩してしまうくらいのアツいアイデアを持った若者がどんどん企画を提案してほしいなって思っています。次の時代に向けて新陳代謝ですね。 ――週プレNEWS読者の中には、昔はよく通ったゲーセンへ足が遠のいている方もいるかと思いますが、改めてゲーセンの魅力とは? 池田 今は家庭用ゲーム機に移植されたレトロゲームも多いですけど、やっぱり実機ならではの迫力を味わってほしいんですよね。遅延の少ないブラウン管とか、レバーやポタンの触り心地。家庭では味わえない独特のサウンド。シューティングゲームだったら最適化された連射装置も付いていますし、家庭用のゲーム機では到底及ばない魅力がたくさん詰まっています。 それに、最近の家庭用ゲームってクリアするまでに結構時間がかかりますけど、アーケードだったら5分10分で気軽に遊べて、達成感や満足感などは一瞬で得られる。100円で10分で大迫力。やっぱりゲームをやるならアーケードの実機が一番だっていうことを体感してほしいです。 それと、ミカドだったら配信に出ている名物プレイヤーに会うこともできます。「いつも見てます!」って簡単な挨拶をするだけでもいいし、もしかしてそこから仲間とか友達ができるかもしれない。ゲームは1人で遊ぶよりも、大人数で遊んだり観戦した方が絶対に面白いですから。 *** ■池田稔(いけだみのる)1974年生まれ。ゲーセンミカド店長で、オリジナルDVDやライセンシー商品の企画発売を行う株式会社INHの代表取締役社長。小学生時代からゲームセンターに通い始め、高校卒業後にゲームセンター店員として働き始める。2006年に「ゲーセンミカド」を開店。著書に「ゲーセン戦記―ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀 」(中公新書ラクレ)。 ■ゲーセンミカド「高田馬場ゲーセンミカド IN オアシスプラザ」、「池袋ゲーセンミカド IN ランブルプラザ」、「ゲーセンミカド×ナツゲーミュージアム in 白鳥会館(高田馬場)」の3店舗を構えるゲームセンター 取材・文/ゆん 撮影/山添 太