福島原発被災地の工業系製造事業者 共同受注体制構築へ 企業の販路拡大 官民チームが支援
東京電力福島第1原発事故被災地の産業復興が課題となる中、被災地を中心とした工業系製造業分野の事業者有志は2025(令和7)年度にも、連携して製造や加工などを受注するグループを構築する方向で調整に入った。案件ごとにグループをつくる。福島相双復興推進機構(官民合同チーム)が支援する。被災地では人手不足などで企業単独で需要に応えられず発注を逃す事例も出ており、受注力強化や販路拡大を目指す。福島イノベーションコースト構想や福島国際研究教育機構関連の高度開発にも関わるよう技術力を向上させ地域の課題解決に結び付ける。 企業連携のイメージは【図】の通り。相双地方を中心に金属、樹脂加工、板金、電子基板製造などが参加を検討している。既に、関心を持つ十数社が準備グループをつくり、定期的に会合を開いている。具体的な仕組みは今後詰めるが、グループの窓口・調整役として、地域の企業の強みを知り、営業などの知見がある事業者をコーディネーターとして据える方針。内容や分野ごとに中核となるハブ企業が声かけし共同体内で得意分野や技術・生産力、設備などを踏まえ、参加企業から対応できるチームをつくる。製造の役割や労力などを分担してさまざまな注文に応える仕組みを想定している。
グループ組成により単独では対応できない大量の部品の注文や一定の組み立てが必要な製品の生産、発展が見込まれる廃炉産業や航空宇宙産業など複雑な技術が必要な分野への将来的な対応を視野に入れる。新しい技術が必要になる際も会員企業同士が連携し、開発を迅速に行えるメリットがある。見積もりや発注など中核企業が窓口を請け負うことで事務負担が軽減できる。営業や商談、ブランド力の向上でも連携し、グループならではの強みを打ち出す。 現在、官民合同チームの後押しを受けて全国の事例などの勉強会を開きながら受注の仕組みや組織体制などを決めている。官民合同チームによると、被災地の企業の再開件数は50%台に達し、企業の進出も増えている。一方、人材不足などにより事業者単独では多量の製品発注に対応できないなどの課題もある。大手との商談や営業が難しい例もあり全国で大量の受注で成果を上げる共同体方式が必要と判断した。 ◇ ◇
18日に勉強会を開き、企業関係者が広野町の機器用基板製造事業者の工場を見学。事業概要や技術力、生産力などの強みを共有した。技能実習生の受け入れなど人材確保のノウハウも学び合った。 企業の代表者は「コロナ禍で受注が落ち込んだことから受注共同体に関心を持った。単独では断らざるを得ない案件にも連携で請け負えればと考えている」と話した。同チームは「個々の会員の強みを結集し、柔軟な対応を行える体制を整える。相双地域のものづくり力を高め、産業集積の実現を目指したい」としている。