【霞む最終処分】(51)第9部 高レベル放射性廃棄物 スウェーデン 信頼獲得に長い歳月 失敗教訓に対話重ね
岩盤に亀裂が少なく、地下水の流れが遅いなど長期安全性の確保に重要な地質学的条件を満たしたエストハンマル自治体が選ばれた。自治体の職員は「国の未来を左右していることに責任と誇りを持っている」と胸を張る。一方、選ばれなかった自治体では、悲しみのあまり、地元のスーパーで「なぐさめセール」が行われたという。 ◇ ◇ NPO法人ハッピーロードネット(広野町)の企画で昨夏、浜通りと北海道、青森、茨城、福井各県の高校2年生13人が高レベル放射性廃棄物について学ぶためスウェーデンを訪ねた。最終処分場の建設予定地や最終処分の技術試験を行っているエスポ岩盤研究所、使用済み核燃料を保管するキャニスターの研究所などを視察し、日本の最終処分事業との進め方の違いについて理解を深めた。 参加した磐城桜が丘高の生徒は「自分たちの生活を支えている電気やエネルギーについて理解を深めるのが重要」、原町高の生徒は「自分事として考えなければならない」とそれぞれ感想を語った。
現地で合流した経済産業省資源エネルギー庁放射性廃棄物対策課長の下堀友数は「最終処分場の選定には、長い時間がかかる。スウェーデンと比べれば日本はスタート地点に立ったばかりだ」と受け止める。その上で「若者をはじめ、あらゆる世代がこの問題に向き合うことが大切」と強調した。(敬称略) ※スウェーデンの原発事情 1979年の米国スリーマイルアイランド原発事故を受け、1980年の国民投票で原発からの段階的な撤退を決定し、廃炉を進めてきた。その後、温暖化対策や安定的なエネルギー供給の観点から建て替えを認める法案を可決した。現在はオスカーシャム、リングハルス、フォルスマルクの各原発で計6基が稼働している。