国慶節に中国政府が景気「爆上げ」政策を実施! その効果は???
中国人の「爆買い」はどこへやら
私が住む東京でも、先週の国慶節連休中、たしかに中国人観光客と思しき人々を、よく見かけた。だがコロナ禍の前のような、両手に持ちきれないくらいの免税品を抱えて歩くという光景は、とんと見なかった。そこで、本日の2句目――。 爆買いもいまや昔の銀座道 私もコロナ禍前は、国慶節ともなると連日、中国から遊びに来た友人知人との会食や案内に追われたものだ。彼らが最も愛する新宿の「かに道楽」に、3日続けて予約を入れたこともあった。当時は誰もが、その日に買った「戦利品」の包みを山ほど抱えていて、半ば呆れながら見ていた。 だが、今年の国慶節にやって来た知人は、会社を早期に退職した広東省に住む一組の中年夫婦だけだった。夕刻の「かに道楽」の予約が取れなかったので、その近くの伊勢丹デパートの上階にある庶民的な寿司屋に案内した。 伊勢丹でたっぷり買い物した後かと思いきや、夫人が小さなハンドバッグを下げている他は、ほぼ手ぶらではないか。開口一番、そのことを指摘すると、彼は少し口を尖らせて弁明した。 「買い物なんてほとんど何もしないよ。日本へもLCC(格安航空会社)に乗って来たくらいだ。今回訪日した本当の目的は、現在高校生の一人息子を、卒業後、日本へ留学させたくて、その下見なのだ。 数年前から息子の高校で、卒業後に中国の大学へ進学せず、日本などに留学するケースが現れ始めた。当初は『愛国心を捨てたのか』などと教師たちから批判を受けたが、いまでは『日本へ行ける若者はどんどん行け』と奨励されている。もはや、わが国の長期的な不況は必至で、中国の大学を卒業してもロクな就職先に就けないことが、誰の目にも明らかだからだ」 この知人はこの日、以前は飲めなかった日本酒をしこたま呷(あお)った。そのせいか、実に多弁だった。 「ウチの近所にあるショッピングモールは、上階のレストラン街以外はすべての店舗がつぶれ、『ゴーストデパート』と化した。同じく、近所でよく買い物していた外資系の大型スーパーも閉店し、そこへ国内チェーンのスーパーが入った。だが、やはり数ヵ月で閉店してしまった。駅前の高層オフィスビルも、空き部屋だらけで、昼間から真っ暗な階がいくつもあって気味が悪い。 私が住んでいるマンションは、10年ほど前に買った時から4割くらい価格が下がり、資産は大幅に目減りした。それでも私の世代は、長期の経済成長の波に乗って、恵まれていたと思う」 そう言って、ふう~っと息を吐く。ちなみに、私が注文した日本酒は、中国政府が「核汚染水の震源地」と呼んでいる福島の銘酒『写楽』だった。そのことを知人に告白すると、赤ら顔でニッコリ微笑んで、一気に呷った。「お代わり!」 「日本はいいよな。トップ(首相)が突然代わっても、安全・安心・安寧の国だから。わが国は、トップが一向に代わらないのに、安全・安心・安寧がない。ちなみに日本旅行は、以前は『洗肺遊』(シーフェイヨウ=大気汚染のひどい中国から逃れる「肺を洗う旅」)と呼ばれていたが、最近では『洗心遊』(シーシンヨウ=中国の不快なことから逃れる「心を洗う旅」)と呼ばれているよ(笑) 『国慶節の7連休』などと宣伝しているが、大勢の失業者にとっては、そもそも『365連休』ではないか。特に、職に就けない若者たちがかわいそうだ。この連休中も、自宅で『黒神話:悟空』(8月20日からダウンロードが始まった若者たちを虜にしているスマホゲーム)に興じているだけなのだから」 中国ではこの夏、1179万人もの大学生・大学院生が卒業した。当然ながら、いまの中国社会はこれほど多くの若者を吸収できる状況にはない。8月の若年層(16歳~24歳)の失業率は18・8%に上る。国家統計局の公式統計によればだ。