肥満症の薬2種類登場 違いは?…低血糖や急性膵炎、便を伴うおならの副作用も
肥満に加え、関係する病気などを抱えている状態は肥満症と呼ばれます。今年に入り、治療や予防のための薬が2種類発売されました。運動や食事の改善と合わせて使うことで、体重を効果的に減らせるようになると期待されています。(鈴木恵介) 【写真4枚】体力が落ちたと思ったときに…筋力アップ まずは20秒から
命に関わる病気併発
肥満は脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、肥満の度合いを示すBMIが25以上を肥満、35以上を高度肥満と、日本肥満学会は定義しています。BMIは体重(キロ)÷身長(メートル)÷身長(メートル)で求めます。国の2019年の調査では、男性の33%、女性の22%が肥満となっています。 肥満の中でも、肥満に関係する病気などを併発している、または内臓に脂肪が一定以上蓄積している場合に肥満症と診断されます。併発する病気には、2型糖尿病や高血圧のほか、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞といった命に関わるものがあります。
肥満症の治療は、減量によって、併発する病気の状態を改善することが基本となります。まず運動やバランスの良い食事といった生活習慣の改善を進めますが、効果が十分に出ない場合に薬物治療を検討します。ただ、これまでの治療薬はBMIが35以上など対象が限られていました。 そうした中、今年2月に治療薬の「ウゴービ」が発売されました。国内では約30年ぶりの新薬の登場となります。食欲を抑えたり満腹感を高めたりして、減量をする効果があります。 日本人も参加した臨床試験では、ウゴービを1年3か月強使った群は体重が13%減り、偽薬の群の2%減より大きく減りました。高血圧を合併しているなどの使用条件があり、医師に処方してもらい、週1回腹部などに注射で投与します。
同学会理事長で千葉大学長の横手幸太郎さんは「生活習慣の見直しが前提となるが、体重が減らずに悩む患者は多い。新薬を合わせて使うことで減量しやすくなる」と話しています。 兵庫県明石市の女性(52)は20歳代で肥満症と診断されました。BMI39・8で、医師から生活習慣の指導を受けましたが、体重は落ちませんでした。今年4月に投与を始めたところ、食事の時に満腹になるのが早まり食事量も減りました。女性は「体重が減ればファッションの幅も広がる。おしゃれを楽しめるようになりたい」と話しています。 肥満症を予防する薬「アライ」も4月に発売されました。脂肪の吸収を抑える働きがあり、国内の臨床試験では内臓脂肪と腹囲を減らす効果が見られました。処方箋は必要としませんが、薬剤師が直接販売する要指導医薬品に位置付けられています。購入には、腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上などの条件があります。
副作用のリスクも
近年、美容やダイエットを目的に、ウゴービと同じ成分の糖尿病治療薬が使われる事案が起きました。ウゴービには低血糖や急性膵炎(すいえん)、アライには便を伴うおならなどの副作用のリスクがあります。 神戸大糖尿病・内分泌内科学教授の小川渉さんは「それぞれ肥満症の専門医、薬剤師の指導の下で適切に使うことが大事だ。副作用が疑われる場合にはすぐに専門家に相談してほしい」と指摘しています。