米大統領選挙を視野に両国ともに日米同盟深化を狙う首脳会談に:日本は『もしトラ』に備える狙いも
日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収問題が日米連携の試金石に
10日の首脳会談では、防衛装備品の共同開発に向けた日米の協議体の創設が確認される見込みだ。また日本では、今年年末に、陸海空3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」が創設されるが、その組織と在日米軍司令部との連携の在り方も協議される。 そして、日米双方のメディアが注目しているのは、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収問題だ。バイデン大統領は、大統領選挙にも大きな影響力を持つ労働組合の買収への反発や、かつて米国を代表した企業が海外企業に買われることへの国民の不満にも配慮して、この買収に慎重な姿勢を打ち出している(コラム「バイデン米大統領が日本製鉄のUSスチール買収に否定的な姿勢を示す:大統領選挙に翻弄される買収計画」、2024年3月22日)。 しかし一方で、この買収は、米国経済に恩恵をもたらすものと考えられる。この買収を否定的に捉えることは、日米関係の強化が米国経済、雇用にプラスであるとする、今回の岸田首相の訪米のメッセージと矛盾してしまうだろう。 今回の首脳会談後には、米国のメディアが、バイデン大統領に対して、こうした矛盾をついてくる可能性がある。両国首脳は、この買収問題が両国関係の結束にマイナスとならないように最大限の配慮をし、結局は玉虫色の説明に終始することになるのではないか。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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