「化けたら面白い選手はいるか?」原監督の一言で戸郷翔征の指名は決まった【元巨人スカウト部長インタビュー】
高校生に「進学」を勧める理由
――高校生でプロに入るべき選手の定義はどう考えていますか? 長谷川監督 清原 和博内野手(PL学園)や、今で言えば浅野 翔吾外野手(高松商)くんのような選手であれば、プロの門を叩くべきだなと思います。そうでなければ、選手の寿命も伸びていますし、大学や社会人を経験しても全く遠回りにならないと考えています。ある程度経験を積むと人間的な成長もあるし、大学・社会人でレギュラーを張っている選手たちは、ファーストステージをクリアしたところからスタートできるので、プロでは即戦力として入ってこられるわけですから。 ――巨人の山瀬 慎之助捕手(星稜)も当時に長谷川監督が絶賛するコメントを残されていた印象です。 長谷川監督 僕は彼の地肩にすごくほれ込んでいました。その年は東海大にいた海野 隆司捕手(関西―東海大)がいて、周りは多分原監督の母校でもあるし、巨人は海野をマークしているだろうというような話が出ていたのですが、僕は山瀬を取って欲しいと言いました。年齢層から考えても、大卒の海野選手よりも4つ下の山瀬がすごく欲しかったんですよ。 ――高校生がなるべく進学した方がいいと考えると理由は何ですか? 長谷川監督 大学っていうのは勉強も当然するんですけど、1番多感な時期に親の仕送りを出してもらって、学校をでるということは人に対する感謝の念を持てるというのもあると思います。僕は中途半端にプロに入って2~3年在籍するというのであれば、大学に行ってから、しっかり自分の思いを持ってプロにチャレンジするのがいいんじゃないかなと思います。 ――人間的な部分でも成長してから、プロ入りすることが重要ということですね。 長谷川監督 そういった意味ではセカンドキャリアも重要視しています。我々も手助けしますし、お手伝いさせていただきます。スカウトって預かるばっかりじゃなくて、その出口の仕事もするんです。 ――巨人は引退された選手がスカウトや球団職員、ジャイアンツアカデミーのコーチなどに転身することも多いですね。 長谷川監督 巨人は母体として大きいので、セカンドキャリアは多いですよ。スカウトはただ取ってくるだけじゃないんです。品評会でぱっと見て、美味しそうなお菓子があったからこれがいいや、とはならないんです。吟味するからこそ推薦するのも勇気が必要になるし、覚悟も必要になる。それだけ人生をかけないと、人の人生を動かす仕事はできません。