冤罪で拘束47年7カ月…弟の経験を無にしない 姉・袴田ひで子さんは集会で訴えた「みんなの力で再審法改正を」
1966年の静岡一家4人殺害事件の再審で袴田巌さん(88)を無罪とした静岡地裁判決を受け、再審法改正を求める集会が28日、都内の弁護士会館であった。袴田さんの姉ひで子さん(91)や79年に大崎町で男性の変死体が見つかった「大崎事件」の弁護団らが「1日も早い制度改革を」と訴えた。日弁連が主催し全国をオンラインでつないだ。 【写真】〈関連〉大崎事件について説明する弁護団長の森雅美弁護士(手前)=28日、鹿児島市易居町の県弁護士会館
再審制度を巡っては、証拠開示の基準や手続きが明確ではなく、再審開始決定に検察官が不服申し立てを行う事例が相次ぐなど、冤罪(えんざい)被害者の速やかな救済が妨げられる課題が指摘されている。 ひで子さんは集会で「47年7カ月も拘束された弟の経験を、何らかの形にしなければならない。みんなの力で再審法改正を」と呼びかけた。 殺人罪などで満期服役した大崎事件の原口アヤ子さん(97)は、過去に3回の再審開始決定を受けたが、いまだに救済が実現していない。弁護団の鴨志田祐美事務局長は「法の不備により請求人が高齢化したり、亡くなったりする事件は多い。アヤ子さんは起き上がることも、声を発することもできない。人生が尽きるまで待たされないといけない現実がある」と話した。 森雅美弁護団長は鹿児島市の会場から「検察官の抗告により開始決定が覆されてきた。法改正は急務だ」と訴えた。 ◇大崎事件弁護団も声明「ただちに上訴権放棄を」
1966年の静岡一家4人殺害事件の再審で袴田巌さん(88)を無罪とした静岡地裁判決を受け、大崎事件弁護団(森雅美団長)は「検察官はただちに上訴権を放棄し、無罪判決を確定させるべきだ」などとする声明を発表した。26日付。 声明は、袴田事件が再審法制度の欠陥を改めて浮き彫りにしたと指摘。証拠開示制度に不備があるとしたほか、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てが長期化の原因だとして、政府や国会による速やかな法改正も求めた。 その上で「袴田事件は死刑冤罪の残酷さと再審事件を闘う過酷さを如実に物語るものであり、悲劇を二度と繰り返してはならない」と強調。大崎事件で殺人などの罪に問われ、約45年にわたり無実を訴え続ける原口アヤ子さん(97)について「一刻の猶予も許されておらず、早期の再審開始と無罪確定を実現する必要がある」とした。
南日本新聞 | 鹿児島
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