『ブギウギ』近藤芳正がいるなら間違いない! どんな場面にも対応できる抜群の安心感
いよいよ幸せモードに突入するかと思いきや、そうもいかない朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)。ヒロイン・スズ子(趣里)と愛助(水上恒司)の微笑ましい真剣交際がはじまったばかりだが、この幸福な関係性が新たな不幸を呼び込もうとしているようでもある。 【写真】小雪が演じる、村山興業の社長・村山トミ そんなところ、新キャラクターとして愛助の恩人である山下達夫が登場することになる。演じているのはそう、日本が誇る名バイプレイヤーのひとり、近藤芳正である。 この山下という人物は、愛助の家業である「村山興業」の元やり手社員で、愛助が小さい頃に父親代わりのように面倒を見ていた存在だ。これから愛助の紹介で「福来スズ子とその楽団」のマネージャー候補となるらしい。スズ子が率いる同楽団のマネージャー・五木ひろき(村上新悟)が不穏な動きを見せていたことから、これから先が不安だが、彼の登場でどのような変化が起きるのだろうか。 第7弾の新キャスト発表時に、制作統括の福岡利武は「愛助を子供時代から見守り、スズ子と愛助の若い二人を支えていく山下達夫役は近藤芳正さんです。近藤さんから滲み出す、優しさと時折見せてくれる厳しさがドラマに深みを与えていただいています」と、本作における近藤の役割を語っている。この発言から、山下はスズ子らの“絶対的な味方”だと見て間違いないだろう。「スズ子と愛助の若い二人を支えていく」という言葉と、「優しさと時折見せてくれる厳しさがドラマに深みを」と述べているあたり、この山下という人物は今後のキーパーソンとなることを示唆しているようにも思う。 いっぽうの近藤はキャスト発表時の公式コメントで「制作発表された時から、ずっと気になっていました! いつ来るのかなぁ、いつ来るのかなぁと、オファー待ちをしていたので、出演できてめちゃ嬉しいです!!」などと軽快に述べている。大ベテランとしてのある種の余裕があるからこそのコメントだろう。それもそのはず、近藤は「朝ドラ」の常連俳優である。 時代が令和に入ってからだけでも、『なつぞら』、『カムカムエヴリバディ』、そして今作『ブギウギ』の3作に出演。制作サイドからの信頼度が高いことも分かるが、実際のところ私たち視聴者も「近藤芳正がいるなら間違いない」といった印象が彼に対してあるのではないだろうか。さすがは大ベテランにして名バイプレイヤー。どの作品でも、初登場した際のその第一声から安心感がハンパない。 そんな近藤芳正は、中学生の頃に演技の道に進み、今日まで長く豊かなキャリアを築き上げてきた。劇団青年座研究所で基礎を学んで技を磨き、三谷幸喜をはじめとする名だたる劇作家や演出家の作品に出演。膨大な数の映画やドラマの現場に参加しながら、いまでもコンスタントに舞台に立ち続けている。 とくに映画においては三谷幸喜作品の常連俳優のひとりであり、『THE 有頂天ホテル』(2006年)や『ザ・マジックアワー』(2008年)などでのコミカルなイメージが広く浸透しているのではないだろうか。が、もちろん彼は作品のジャンルも役のタイプも問わない。文学色の強い作品からザ・エンターテインメントな作品にまで適応するその姿は真の名バイプレイヤーであり、「近藤芳正がいるなら間違いない」と全方位的に思わせている存在なのである。 今作『ブギウギ』では主人公サイドにつく“絶対的な味方”であることは間違いないが、近藤はどのような山下達夫像を立ち上げ、劇中に漂う不穏な気配を拭いさるのだろうか。彼が今後のキーパーソンとなるであろうことは先述したとおりだ。コミカルなのか、シリアスなのか。いずれにせよ、近藤芳正がいるなら間違いない。
折田侑駿