下諏訪宿本陣 岩波家に伝わる古文書がヒント!大学生が伊能忠敬の弁当の再現に挑戦
下諏訪宿本陣 岩波家(長野県下諏訪町)
実践女子大学調理学第二研究室のゼミ生9人が、伊能忠敬ら第七次測量隊18人に用意された弁当の再現レシピ(材料および分量、作り方)に取り組んでいる。2024年度同大学の教育プロジェクト「江戸の食文化から学ぶSDGsフィールドスタディー」だ。 「当時、どんな食材が使われていて、それがどのように調理されたのか、そして現代にどうつながっているかを学び、食文化の深さを感じてほしい」と話すのは、同大学の佐藤幸子教授(食生活科学科)。 2024年2月、伊能忠敬ら第七次測量隊が、下諏訪宿の本陣を訪れた時に供された食事の再現レシピが発表され、大きな話題となった。多くの関係者の協力のもと、そのレシピを作ったのが佐藤先生だった。
本陣 岩波家に伝わる約4メートルの古文書には、測量隊が宿泊した1809年(文化6年)旧暦の9月24日の夕食から27日の夕食までの品書き・材料が記されていた。佐藤先生は、その中から雑煮や本膳の飯、汁、茶碗蒸し、平(煮物)、焼物、香の物、菓子重など10品を再現したが、そこには料理者としての創意工夫があったという。「献立書」には、食材の記載はあるものの、分量や作り方は記されていない。そのため江戸時代の料理書などを参考にしながら、日本料理の基本的な料理法や当時の調味料で、その材料の食味を想像して、現代に合うようにアレンジする面白さがあったという。 今回、ゼミ生たちには、「献立書」の3日目に記されていた弁当の再現レシピを課題にした。伊能忠敬をはじめ測量隊の人たちが、諏訪湖周辺の測量調査の時にどんな弁当を食べたのか? 本陣はどんな思いでその弁当を用意したのか? 歴史ロマンに思いを馳せながら、清水華音さん、真船美咲妃さんの2人を中心にゼミ生たちが試作を重ねた。佐藤先生のアドバイスを受けながら、作る学生たちの顔は真剣そのもの。全体の色どりに苦労しながらも、一つ一つの料理を詰め込んだ弁当ができるとその表情は笑顔に変わった。
7月下旬には、実際に下諏訪を訪れ、岩波家をはじめ関係者たちとも意見交換をした。9月からは更なる改良に取り組み、最終的には現地で販売するための商品化を目指しているという。 歴史ロマンあふれる弁当が、諏訪湖や諏訪大社、宿場町、温泉などで知られる下諏訪町の新しい観光商品になるか……その期待は大きい。 下諏訪宿本陣 岩波家 800円/10時~16時、水曜休※詳細はホームページで確認 長野県諏訪郡下諏訪町横町3492番地イ-1 電話0266・28・7055 ※「旅行読売」2025年1月号より