下野 紘が感じる20年「この仕事を続けるためにもっと自分を磨いていきたい」
オルフェは「心の成長が全くなかったんじゃないか」
――作品全体で印象的だったり、グッと来たシーンはありますか? オルフェに関して驚いた部分でいうと、オルフェはラクスに対して特別な感情というか、ほぼ使命にも近いような感情を持っていましたが、とはいえ「もうちょっと距離の縮め方考えよう?」と(笑)。距離が近いんですよ、最初から。本当に女子に嫌われるよ、ということは思いました。そこにまず驚きました。 ――ラクスに対しては「運命」という言葉もよく口にしていましたね。 あくまで僕の個人的な解釈になりますが、彼自身は運命というよりも、この先、どんなことが起ころうともオルフェとラクスが結ばれて、世界を導いていくのはもう決まっていることだと思っていたんです。だからこそ、なぜそこにラクスは来てくれないのか、そしてなぜキラはそれを邪魔しようとするのか、という考え方しかない。 幼いころからラクスと世界を導く、という思いを抱いたまま大人になって現在に至る、という形だと思うので、ようやくそれを実現できるだけの力を持ち、タイミングが生まれ、この絶好の機会を逃すわけにはいかない。ちゃんと道を正さなければいけない。そういう思いからラクスに対しては「君は僕の隣に来なければならない」、キラに対しては「君は彼女の近くに来てはならない」ということを直接的に言いたくてたまらなく、その結果、あの距離感が生まれたのではないかと思います。 ――後半に行くにつれて、オルフェには驚くほどの強引さも感じられました。 推測にしかなりませんが、彼は人生において失敗したり転んだり、障害だったり、壁だったりというものが全くない人生を送ってきたんでしょうね。かつ、「君はこの世界を統べる存在なんだよ」ということをずっと言われ続けてきた。そこから成長していくし、知識も増えて、能力としては上がっていきますが、心だけは成長せずに来たのではないか、という気がします。 それこそ、最初の紳士的な振るまいもあくまでラクスに対して「君はこうあるべきなんだ」ということを優しく諭し、そして彼女に気づいてもらうためのパフォーマンスみたいなものでしかないのかな、という気がしていて。 本当の彼自身はもっと子どもっぽく、それこそ話が進んでいくにつれて、癇癪を起こした子どものような……そういう印象を受けたので、心の成長は全くなかったのではないかと思います。 ――オルフェは自分を保つために暴走してしまった部分はあるのかと思いますが、ある種、周りの評価に振り回されない、という点では重要なのかな、とも思います。下野さんご自身は自分を保つために気をつけていることはありますか? 振り回されることも多いです。振り回されるけど、でもそれを一度は受け止めないと自分の成長には繋がらないと思うんです。 人生は失敗も成功も必ず何かしらの学びがあって、それをきちんと受け止められるかどうか、そこから選んでいけるかどうかが大切なんですよね。 オルフェに対しても誰かが「それは間違っているよ」と止めたり、間違いを正したり、オルフェ自身もそれに対して考え悩んだりしていたらまた違った人生があったのではないかな、と思います。