助けられてここまでたどり着けた、着実な一歩踏み出す人達【河原小避難所】
様々な人たちに支えられて誕生したかけがえのない命
出産まで1カ月と迫っていた東直美さん(40)は無事にママになっていた。母体を心配した保健師らの尽力により、5月初旬に避難所を出て、熊本市の児童養護施設の空室に移り住み、出産までの20日間を過ごしたという。5月23日、夫、正幸さんにそっくりの長男を出産。新たに借りたアパートで家族3人での生活を始めた。避難所では、赤ちゃんの名前を決める余裕も時間もなかった東さん。 「今回の地震で様々な人に助けられた思いを込めた名前にしたい」と話していた。 出産後も名前を決めかねていた。そんなとき、縁が訪れた。いったん戻った養護施設で、そこで生活する男子高校生が赤ちゃんを抱っこしてくれたとき、「『佑』という字は(人を)助けるという意味があるらしいですよ」と教えてくれたのだ。この字しかないと、「佑樹」と名付けた。 前回の記事を読んだ人なのか、大阪府内の人から、「出産、がんばってください」とのメッセージが添えられた小包も届き、とても励まされたという。 「そんな見も知らぬ方も含め、多くの方々にお世話になって、授かった命だから、大きくなったら、多くの人たちにお返しをしなくちゃね」 東さんは、佑樹ちゃんにいつもそう話しかけている。 (取材・文・撮影:木野千尋)