「道警ヤジ訴訟」、北海道側に賠償命じる判決が最高裁で確定
2019年の参議院選挙の際、札幌市内で街頭演説中の安倍晋三首相(当時)に向け「安倍やめろ」などとヤジを飛ばしたことで多数の警察官に引きずられ排除されたとして、市民2人が北海道(警察)を訴えた国家賠償請求で最高裁は8月19日、道側と原告の男性1人の上告をどちらも退けた。同市の桃井希生さんに55万円の損害賠償を行なうよう道に命じた札幌高裁判決(23年6月)が確定した。 この裁判では、一審の札幌地裁判決(22年3月)が、道警による排除は憲法が保障する表現の自由の侵害だとして、計88万円を原告側に支払うよう道側に判示。二審の札幌高裁は桃井さんへの賠償は認めたが、もう一人の原告である大杉雅栄さんの請求は棄却。ヤジに怒った周囲の自民党員から大杉さんを避難させた、などとする道警の主張を認めた。これに対し大杉さんと道の双方が最高裁に上告していた。 判決確定後の20日の会見で桃井さんは「道警に(責任者の)処分を求める」とし、大杉さんや弁護団は道警の違法を放置してきた道公安委の責任に言及した。札幌地裁判決後の22年6月、同公安委の小林ヒサヨ委員長(当時)は道議会で「委員会として判決文を確認していない」と答弁。原告・弁護団が「警察を民主的にコントロールする職責の放棄だ」と繰り返し抗議してきたからだ。 公安委は警察行政の民主的運営と政治的中立性の確保を目的として戦後に新設された。だが民間から選ばれる委員は名誉職化し、独立した事務局を持たず、業務を警察が兼務。最高裁決定を受けた筆者の道公安委への取材申し込みは道警広報を窓口に指定され「個別の案件について回答しない」との回答も同広報からの電話だった。管理をすべき側とされる側が一体となっている。根は深い。
徃住嘉文・報道人