引退示唆の石井が1本勝ち! 急転、現役続行も?
北京五輪の柔道100キロ超級金メダリストで総合格闘家の石井慧(28)が11日、両国国技館で行われた格闘技イベント「イノキ・ゲノム・ファイト3」に出場、ニック・ロズボロウ(33歳、米国)と対戦して1ラウンド4分22秒、アームロックで一本勝ちを収めた。「総合格闘家引退」を示唆していた試合で、試合後の言動が注目されていたが、試合後の会見では「今後、事務所と話し合ってから」と明言を避けた。事務所サイドは、今後、翻意に動く予定で、急転、現役続行の可能性も出てきた。引退か、現役続行か。石井の去就に注目が集まりそうだ。
身長が196センチ、体重でも10キロも上回る巨漢のニック・ロズボロウに何もさせなかった。打撃を封印。頭をつけてコーナーに押し込んでテイクダウンをとると、終始、上になってグラウンド戦をコントロールした。最初は、サイドをとって「肩固め」を決めにいった。それを外されると、今後は、バックをとる。スタンディングになっても、再びテイクダウン。最後は上になったまま体をうまく回転させて押しつぶすようにフロントの体勢をとると、そのまま右腕をアームロックに固めた。 「オランダでは、柔道家の戦いで行こうと適当ではなくハードなトレーニングをしてきた。長所を生かして相手を完全に封じ込める戦い方」 打撃を捨て地味だが、相手にとっては嫌な柔道の世界に引き込み1本を奪った。 UFC出場経験もないニック・ロズボロウでは、石井の役不足だったのかもしれない。 「勝っても負けても最後にしようと考えている」と、引退を示唆して臨んだラストリングだった。セコンドには初めて父の義彦さんがついた。石井を柔道の世界に引き込んだ柔道家で教育者の父を呼んだ行動にも、引退の気持ちが、垣間見えた。それだけに試合後の言動が注目されていたが、石井は絶叫こそしたが、リング上でマイクを取ることはなく、ロープをくぐった。そしてインタビュールームでは、真っ先に去就に関する質問が飛んだが「事務所と話してから、決めますので、ここで勝手なことはいえません。いつも裏筋ばかりをとっているので筋を通さないとね」と明言を避けた。 昨年は、ミルコ・クロコップに連敗。どちらも完敗だった。 「いつも以上に緊張感があった。連敗しているので3連敗はできないというプレッシャーはあった」という。 そういう試合を乗り越えたことで心境に変化があったかとも質問されたが、うまくはぐらかした。週明けにも、今後についての話し合いを持つ事務所の人間も心配そうに会見を見守っていたが、「できれば続けて欲しい。そう説得していきたい」と、現役続行に向けての説得を行う意向を示した。 引退の明言を避けたことで、急転、現役続行の可能性も浮上してきた。 石井は、7年前に柔道から総合格闘家へ転向した際にも、迷うことなく電撃的に決断した。直感的に行動する石井のことだから、今後、どういう決断を下すのかが読みにくい。リベンジを果たしたいミルコがUFCに戦場を移したことで、今後のモチベーションを保ちにくいという現状もある。引退か、それとも事務所の説得を受けての現役続行か。日本の総合界の重量級を引っ張る石井の去就に引き続き注目が集まる。