SAGA久光スプリングスが地元佐賀で戴冠 春高連覇「世代屈指のエース」が復活【国スポ・バレー成年女子】
国民スポーツ大会(国スポ)のバレーボール成年女子決勝が9日、佐賀市のSAGAアリーナで行われ、SAGA久光スプリングスの佐賀が岡山シーガルズの選手で構成する岡山とのSVリーグ勢対決にセットカウント3―0(25―12、25―21、25―16)で快勝し、2年連続6度目(成年種別が1・2部制となった1988年以降、9人制を制した76年以降では10度目)の優勝を果たした。 ■SAGA久光スプリングス決勝の先発メンバーはこちら 迫力満点のブロックと強打で国スポ優勝の原動力となった荒木彩花(23)が「ちょっと上から目線になっちゃうんですが…」と前置きした上で続けた。「私よりも若い選手が活躍してくれて、本当に成長しているな、頼もしいなと」。パリ五輪で「日の丸」を背負ったミドルブロッカーは後輩たちに乗せられるように躍動。試合前は控えめにしようと心がけていたという、荒々しいガッツポーズを惜しげもなく披露した。 そんなポジティブなムードを醸成したのは、21歳の吉武美佳と深澤めぐみだった。第1セット序盤の7連続得点。両翼から決定打を繰り出し、チームを勢いづかせた。 首脳陣は今大会の3試合を通して吉武にライト側からの攻撃を託した一方で、レフトプレーヤーは攻守で安定感のある中島咲愛(25)を固定し、対角には経験豊富な中川美柚(24)を初戦、成長株の北窓絢音(20)を2戦目に配した。狙い通りに機能した2人に続き、この日は堅守の岡山相手に攻撃で主導権を握ろうと、決定力のある深澤を抜てき。この起用も的中した。 「この会場でプレーができること、コートに立って何ができるのかということに対して喜びを感じました」。かみしめるような口調で深澤が明かしたのには理由がある。就実高(岡山)では全日本高校選手権(春高バレー)を連覇し、2年連続で最優秀選手賞にも輝いた。「世代屈指のエース」として鳴り物入りで入団しながら、高卒2シーズン目の昨季はコンディションが整わなかったことなどもあり、羽ばたけなかった。 これまでの深澤はレシーブに心を砕くあまり、持ち味の攻撃面にも影響を及ぼしていた。「今日は最初から『得点を取る』ことを意識して、どっちつかずにならないように一つのことに集中して臨みました」。シンプルな考えと芽生えた積極性が、次々と得点を呼び込んだ。クロスに打ち抜くだけでなく、相手のブロックを利用したり、ライン際を狙ったりするなど今夏取り組んだテーマを遂行した。リズムの良さは守りにも表れ、相手の強打や軟打にも体を張って対応。巡ってきた出場機会で結果を出したのはもちろん、ポイントを挙げるたびに駆け寄ってくるチームメート、コート脇で声をからして支えてくれたサポートメンバーの笑顔がうれしかった。 チームは国スポ、SVリーグ、天皇杯・皇后杯全日本選手権の「3冠奪取」を視野に入れており、まずは1冠目を手にした。しかも3試合で失セットなしの完全優勝。「国スポは(今月13日に初戦を迎えるSV)リーグに向けての強化と並行して難しかったところもありましたが、今日は今大会一番のパフォーマンスをしてくれた。収穫はサーブをしっかりと打てたこと、ラリー中も決定打を出せたことです」。酒井新悟監督(55)がうなずいた。若手が生み出した、この勢いを揺るぎない強さに変えられるかどうか―。2024~25年シーズンを終えた時に「あれが分岐点だった」と振り返れる国スポになるかもしれない。(西口憲一) 【#OTTOバレー情報】