西武線で広がった“秩父の味” 風土が生んだ伝統野菜の漬物「しゃくしな漬」 ファン増えても地元で地道に
県内外にファンが多いが、販路を大きく広げる考えはないという。「どこでも売っている全国区の商品にしたいとは思わない。地元に根差しながら、目の行き届く範囲で丁寧に作ることのほうが大事」。“秩父の味”を真摯(しんし)に守る。(敬称略) ■県内土産の人気上位 しゃくし菜はチンゲンサイを大きくしたような形で、背丈が約50~80センチほどに育つ。明治初期に中国から伝わったとされ、昭和初期まで国内各地で生産されていた。しかし、ハクサイの生産が広まるにつれて姿を消し、秩父地方など一部地域が産地として残った。 秩父地方の農家では8月下旬~9月上旬に種をまき、10月末~12月初旬に収穫。収量も見込めるため、農閑期の農家にとっても格好の野菜だ。しゃくし菜の漬物はご飯の副菜としてでなく、刻んでおやきのあんや、お茶漬け、ピザやギョーザに入れるなど、洋風や中華とも相性が良い。 JAちちぶ(秩父市)では昨年、26軒の契約農家から、しゃくし菜約120トンを集荷。そのうちの約半分を皆野農産物加工センターで「ちちぶ菜漬」などに加工して販売している。地元の婦人会や青果店が製造したものも道の駅などに並ぶ。石川漬物でも小鹿野町の黄金カボスを使った「しゃくしな漬」を4月に限定販売、地場産品とのコラボ商品を開発している。
県物産観光協会によると、物産観光館「そぴあ」(さいたま市大宮区)の2023年3月~24年3月26日の総合売上額で「しゃくしな漬」は4位。毎年上位にランキングされる人気商品という。