「人が死んでいる!頭血出てる!うめき声が聞こえる…」西成出身のラッパーSHINGO★と歩く「今回人間で生まれたから、人間ムキ出しで生きたいから」《西成さんぽ》
西成クリスマス#2
本記事のタイトルの言葉はSHINGO★西成の楽曲『ゲットーの歌です(こんなんどうDeath?)』のコーラスで、西成で生きるという悲哀のこもった現実をコミカルに歌った歌詞だ。SHINGO曰く「この10年ほどは路上ひったくりも、あちこちにいた覚醒剤の密売人も、とんと見かけなくなりましたね。防犯カメラが増えたからですかね」と言う。付近に高級ホテル「星野リゾート」もオープンし、街の変化を感じる。しかし西成は西成。いまだディープな街の風景をSHINGOが案内してくれた。 【写真】これが西成や!こんな街ほかにはないで~!
吸ったタバコの吸い殻は灰皿ではなく床に
SHINGOがインタビューに指定した場所は「コーヒーショップ伊吹」。道路の向かいには「スーパー玉出」が見える。縦長の店内で、吸ったタバコの吸い殻は灰皿ではなく床に落とす独特な作法の喫茶店だ。 「俺の実家はこの伊吹側のほうにあって、ガキのころはこの伊吹の向こうの玉出側に渡るのがちょっとした冒険やった」とSHINGO。このコーヒーショップの窓から見える地元の景色と濃い濃いコーヒーがお気に入りで昔から通う。 「濃いコーヒーに今どき珍しい白い角砂糖つき、やろ。ここは『ここから…いまから』のジャケットを撮影した場所でもあります。あの日、ジャケット用にたっかい革ジャン買って用意してたんやけど、炊き出し終わった後、カメラマンと“今日撮っちゃおうか”みたいな話になって、炊き出し終わりのラフな格好で。でも結果、それがよかったんですけど」 「じゃ、ほな、少し歩きまひょか」と外へ。 「SHINGOの西成さんぽ」の始まりです。
「近所のおっちゃんに習った、ここではこうして生きなさい」
まずは「スーパー玉出」。関西の台所として有名なこのスーパーは、野菜に肉に魚にお惣菜から何から何までなぜか安い。「MCハマー。スーパー玉~、や。朝まで~スーパー玉出~しょーもないコト気にせんでかまへんかまへん~玉出~にカマゲン! 24時間営業」 お次はSHINGOが中高時代から通うゲーセン「ポパイ」。 「タッチパネルや画面表示じゃなく、ベット枚数が電卓のようなデジタル表示だし、馬はCGじゃなく模型の馬が走る古めかしい台でしょ。これ俺が中高生くらいのころからあって、周りはみんな40、50のおっちゃんがゲームとはいえ真剣に興じてて、なんつうか鉄火場みたいな危うさで。ぎょうさんお客さんいたのでオレはおっちゃんがスッといなくなったときに、ようやく中で動く馬を眺める、そんな感じやった」 西成にはSHINGO★西成の楽曲のジャケットで見る風景が溢れている。ここはシングル『To Be With You』で見られる西成らしい街角だ。 「あの曲は『大切を大切にする気持ちを大切に』シンプルなこと言ってる歌でしょ。ちょうどコロナ禍で出した歌でした。俺は歌詞を書くときはいつもなんかの紙の切れ端に書いてまとめて。それをクリアファイルみたいなのに入れて溜めて、言葉を繋いでいくんです。このメモ書きでメモする癖は、今年で92歳になったオカンとのメモ書きのやり取りの習慣からなんですよね」 今年8月に朝日新聞で受けたインタビューでは、このオカンとのメモ書きのやり取りのことをこう答えていた。 〈週2回ほど、便箋(びんせん)やチラシの裏に書かれたオカンの手紙がこたつ机の上に置かれるようになったのは、小学校に入った後からだろうか。《ナシが冷やしてあります。食べて下さい》。そんな書き置きもあれば、《よき友であればお互いに話合ふべきです。がまんする時はがまんし、話合ふ時はとことんまで。お互いにわかるまでね》といったアドバイスも〉