栗原小巻出演、「スリランカの愛と別れ」「配達されない三通の手紙」「サンダカン八番娼館 望郷」の3作品を全国無料放送
舞台を中心に活躍する傍ら、「男はつらいよ」シリーズや「水戸黄門」「ひめゆりの塔」など数々の映画やドラマにも出演してきた栗原小巻。“コマキスト”と呼ばれる熱狂的なファンたちも生み出した名女優だ。BS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)では「日本の名優シリーズ うるわしの女優 栗原小巻特集」と題して、栗原が熊井哲、木下惠介、野村芳太郎の3人の巨匠とタッグを組んだ映画作品3タイトルを一挙放送する。本記事では、その3作品のあらすじや見どころについて紹介していく。 【写真】小さなテーブルを囲む栗原小巻“圭子”と田中絹代“サキ” ■木下惠介監督が“4つの愛”を描いた「スリランカの愛と別れ」 9月3日(火)夜8時からは、木下惠介監督が「なつかしき笛や太鼓」以来9年ぶりに手掛けた感動の名作「スリランカの愛と別れ」(1976年公開)をノーカット放送。 仕事でインド洋のマルティブ共和国に派遣された越智(北大路欣也)は、スリランカ共和国の首都・コロンボに仕事のため往来することが多かった。そんな中、日本から来る若者たちの面倒を見ていた松永夫婦(小林桂樹・津島恵子)の紹介により、暗い過去を秘めた宝石商・慶子(栗原小巻)と出会う。互いの淋しさの中、次第に好意を抱くようになる2人だが、家庭のある越智や慶子の暗い過去などにより、2人の恋は一筋縄ではいかず――。 慶子役を演じた栗原は、越智と過ごすときの楽しそうな表情と、過去のしがらみからなかなか自分を解放できない切ない表情の対比を見事に演じている。 また本作では、島の娘と日本人青年、老人夫婦など、越智と慶子含めて“4つの愛の物語”が同時に展開していく。中でも大富豪・ジャカランタ夫人を演じた高峰秀子さんの圧倒的な存在感に注目。ジャカランタ夫人が自身の壮絶な過去を吐露するシーンは、本作の見どころの一つになっている。 ■静かなる“女のバトル”が見どころのミステリー「配達されない三通の手紙」 9月6日(金)夜8時からは、映画「配達されない三通の手紙」(1979年公開)をノーカット放送。「砂の器」や「鬼畜」などで知られる野村芳太郎監督が、エラリー・クイーンの推理小説『災厄の町』を山口県・萩を舞台に映画化した作品で、本格的なミステリー作品に栗原小巻が挑み話題を呼んだ。 物語の舞台は、旅情緒あふれる小京都・山口県萩市。銀行の頭取で名家の唐沢光政(佐分利信)の家には、麗子(小川眞由美)と紀子(栗原小巻)、恵子(神崎愛)という3人の娘がいた。次女の紀子は藤村(片岡仁左衛門)という男性と婚約していたが、藤村は挙式を前に蒸発。紀子はしばらくふさぎ込む生活を送る。 そんな中、突然藤村が帰宅。紀子には笑顔が戻り、2人は結婚した。やがて、紀子は藤村の蔵書の中から実妹の智子(松坂慶子)に宛てた3通の手紙を発見。その恐ろしい文面を目の当たりにし、紀子は驚愕する。さらに智子本人も唐沢家にやって来て、図々しくも唐沢家に居座るようになり――。 本作では、派手なルックスでズケズケとした物言いをする智子と、貞淑だが密かに闘志を燃やす紀子の女同士による“静かなるバトル”が見どころだ。見ていてハラハラさせられるが、栗原と松坂の演技合戦は爽快感すら覚える。 ■社会派監督が描く“からゆきさん”のリアル…「サンダカン八番娼館 望郷」 9月7日(土)夜9時からは、“社会派の名匠”で知られる熊井啓監督による映画「サンダカン八番娼館 望郷」(1974年公開)をノーカット放送。“からゆきさん”と呼ばれる、かつて人身売買で海外へ売られきた人たちにスポットをあて、苦難の道を歩んだ一人の女性の半生を哀切に描いた作品だ。 日本人女性の近代史を研究している圭子(栗原小巻)が“からゆきさん”に関する取材で熊本の天草を訪れた際、みすぼらしい身なりのサキ(田中絹代)という老婆と出会う。サキと会話を重ねていくうちに、彼女がもともと“からゆきさん”だったことを知る圭子。そこでサキの過去を探り出すため、圭子は彼女と共同生活を送ることにした。するとサキは次第に圭子に心を開き始め、自身の壮絶な過去について語り始める――。 山崎朋子のベストセラーノンフィクション『サンダカン八番娼館―底辺女性史序章』を映画化した本作。実際に起きていた社会問題を風化させないよう問題提起しており、作中には原作で登場したボルネオでの娼館での暮らしぶりなどが生々しく描かれている。