「収録は戦場」「お蔵入り頻発」…気鋭の若手コンビ『センチネル』が明かす「人気番組で感じた恐怖」
今年5月から『深夜のハチミツ』(フジテレビ系)に出演を重ねるなど、存在感を増しているお笑いコンビ『センチネル』のトミサット(30)と大誠(30)。インタビュー前半の【バラエティで大躍進中!“ウガンダと日本”の異色の若手コンビ『センチネル』が明かす「大きな野望」】では、コンビ結成秘話から今後の野望について語ってくれた。一見すると、順風満帆なキャリアを歩むように見える二人だが、レギュラー並に出演を続ける『深夜のハチミツ』について聞くと、「収録現場は戦場です」と口を揃える。 【画像】すごい…! カメラに向かって「ガッツポーズ」を決める『センチネル』の二人…! コロナ禍の制作費削減を受け、各局とも比較的予算がかからない「ネタ番組」に力を入れている。数多くのネタ番組が乱立する中、若手が様々な企画に挑戦する人気番組の現場では一体どんなことが起きているのか。収録にあたっての心境や印象的だった企画や先輩ゲスト、ライバル視しているコンビ、さらに事務所の先輩とのエピソードなど、番組の裏側についてじっくり語ってもらった。 ◆「夢の場所ではあるんですよ。けど、実際の現場は戦場です」 ――今年5月から『深夜のハチミツ』に次世代のスター候補“つぼみ芸人”として出演されています。半年くらい経ちますが、もう番組には慣れましたか? 大誠:今もぜんぜん慣れてないですけど、4月に5月放送回分の収録に行ったときは本当に記憶ゼロですね。あんなにがっつりスタジオにいて、1日に4本撮るって経験もなかったから、カメラがこっちを向いてる意味もわからないぐらい緊張してました。 今は「スタジオにいる」ってことにはちょっとだけ慣れましたけど、まだここからがスタートラインだと思うので何とか頑張りたいですね。 トミサット:外から見ると若手芸人が和気あいあいとやってる感じだと思うんですけど、やっぱ収録現場は戦場というか。「みんな仲良くやろうよ」って中にも、絶対お互いに仕掛け合いみたいなのがあるんですよ。 みんなギラッギラしてるし、スピードも速いし、「いかに自分を映像に残すか」っていう気持ちが渦巻いてる。オンエアできないくらい、「我先に」となってゴチャゴチャして企画をぶっ壊してる場面が何回もありますから。 大誠:収録がめちゃくちゃ押すとかね。まず僕らみたいな若手がテレビにレギュラー並みに出れるなんてあり得ないですから。 トミサット:僕は『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)とかを見て育ってるから、『深夜のハチミツ』って夢の場所ではあるんですよ。けど、実際の現場は戦場です。 ――これまでの収録で、もっとも印象に残っている場面は? 大誠:僕は「元気-1GP」ですね。“一番元気なヤツが優勝”って企画で、打ち合わせの段階でスタッフの方から「元気にやってください」って言われるんです。「元気入場」「元気楽屋挨拶」、元気に何かを宣誓する「元気宣誓」とか、とにかく全部元気にやるっていう。 僕は喉をやっちゃって声が出なくなるし、ほかの若手は張り切り過ぎて収録がめちゃくちゃになったんです。『ちゃんぴおんず』の日本一おもしろい大崎さんが、小道具のスーツケースに頭突きして“鬼のツノ”みたいなたんこぶ作ったりとか(笑)。「元気-1GP」なのに、撮影中に「元気過ぎるので1回止めます!」って怒られたのが印象深いですね。 トミサット:先輩ゲストで言うと、『麒麟』の川島(明・44)さんがすご過ぎるなっていう。もちろん、ほかの先輩のみなさんも「何手先を読めてるんだ?」って思うことが多々あったんですけど、その中でも川島さんはバケモノじみてました。 ちょっと芸人がゴチャついた状態になると、若手は「何この空気?」とか「すみません、ちょっとスベりました」とか降りる言葉を使うんですよ。でも、川島さんは必ず何かに例えたりして言葉で落としてくれる。しかも、1組だけじゃなく若手全組に振って落とすんです。一線級ってこのレベルなんだって痺れましたね。 ――お二人は、活躍したつぼみ芸人に贈られるバッチ「はっち」を4個獲得しています。現在トップを走っていますが、この番組で自信がついてきたところもありますか? 大誠:横で見てて、トミサットはめっちゃ変わったと思いますよ。明らかに前に出る力がついたんじゃないかなって。 トミサット:番組の方向性が変わった10月くらいから「ちゃんと番組の趣旨を理解して言葉を残す」ってことを心掛けるようになったんですけど、5月~9月までは「どうにかして誰よりもここに残る」ってことしか考えてなくて。 オンエアに乗ってない、ヤバいときもいっぱいありました。これまではうまい具合に編集で面白くしてもらったんですけど、今後はそれだけじゃダメだなって。もうちょっと求められてるものを理解して前に出ようと思います。 ――同世代の芸人も多いと思うんですが、ライバル的な存在はいますか? 大誠:『タイムキーパー』ですね。大阪吉本で僕らの1年後輩なんですけど、『M-1』準決勝に行ったこともあるコンビで、けっこう前から僕は「ツッコミの安土(範彦・芸名は「ひでき」)に似てる」って言われてたんですよ。 『タイムキーパー』のほうが知名度あるのは仕方ないにしても、実際に対面したときに向こうが僕ら『センチネル』のこと知らなかったっぽくて。それがちょっと悔しいというか、個人的には「あの二人に負けたくない」って気持ちがありますね トミサット:僕は『9番街レトロ』さん。漫才ではなかむら☆しゅんさんがツッコミなんですけど、ボケもできるんですよ。『麒麟』川島さんと同じでめちゃめちゃ器用だし、どんなところにも入っていって落とせる。打席の多さがエグいんです。 番組のフロントマン的な感じになってると思うし、ちょっとあの人からいろいろと盗んで超えなきゃなと思って。ボケの京極(風斗・28)さんもすごい器用だし、物事の趣旨を理解するスピードが速すぎる。先輩ですけど、同じ世代の芸人として負けたくない。今は圧倒的に負けてますけど、最終的には超えたいです。 ――同じ太田プロでは『モシモシ』さん、『ロックス』さんも出演しています。 大誠:トミサットが『ロックス』の千葉(康介・34)さんとすごいしゃべってますね。 トミサット:『ロックス』さんって太田プロの若手の中で本当にカリスマというか。とくに千葉さんの物怖じしないガヤがすごい面白くて。『キングコング』さんがゲストの放送回も、物怖じせず西野(亮廣・43)さんに「あんた、○○だろ!」とかガンガン言ってちゃんとオンエアに乗ってるし。そのへんはめっちゃすごいなと思いましたね。 大誠:『モシモシ』さんはよくライブで一緒になることもあって、収録のときにいると安心するし、めっちゃやりやすいですね。 トミサット:ライブが終わったら毎回飲みに行くぐらい仲が良いんです。けど、番組だけじゃなくお笑い界全体を見渡したら、ライバルはいっぱいいますからね。僕、自分と同じハーフ芸人を全部チェックしてるんですよ。 ――『マテンロウ』のアントニーさん(33)、『デニス』の植野行雄さん(42)のような先輩がいて、最近では『ドンココ』が活躍していますよね。 大誠:『ドンココ』の存在を知ってから、トミサットは1週間ぐらい夢でうなされたらしいです(笑)。 トミサット:まさか本当の兄弟のハーフ芸人が出てくるなんてね(苦笑)。ほかにもハリウッド映画に出てる『凛凛パーカー』のレオ(30)って芸人もいるし、ついには『たまゆらレスト』っていうアフリカ系ハーフのコント師まで出てきた。 ここまでくると、僕の父親がウガンダ人なんてことは武器にならない。もうそんな時代じゃないんです。やっぱり僕らは、老若男女誰が見ても「この人すごいな」って思うようなコンビにならなきゃなって思います。 傍目には順風満帆なキャリアを歩むが、その裏では若手芸人だからこその悩みや葛藤を抱える二人。それでもインタビューに答えた彼らの表情には充実感が漂っていた。夢への旅路は、まだ始まったばかりだ。 取材・文:鈴木旭 フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。2021年4月に『志村けん論』(朝日新聞出版)を出版。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中。http://s-akira.jp/
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